『バレエ星』刊行の追い風となったのは、昨年(2016年)に刊行された『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』である。よく考えたら一冊も単行本が出ていない作家のガイドブックが出るのも珍しい話で、この英断には頭が下がる。
谷ゆき子のマンガに「超展開」という言葉をさずけた編集者のセンスはすばらしい。バレエマンガとして「ありえな〜い」といったらそれまでなのだが、ストーリーの常識を軽々踏み越えて、読者に感情移入させる……「前へ前へと進む力」が勝っているからこそ、本作は今再び拍手をもって迎えられているのだろう。
原画が紛失しているため、本書では掲載時の雑誌からの復刻を行っている。柱や雑誌の記事ページで、当時の読者たちがヒロインに実在の友だちを想うように寄せた言葉に触れられるのも趣深い。
さらなる谷ゆき子作品の刊行を切に願う!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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