話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『バレエ星』
『バレエ星』復刊に携わった担当編集の方から、コメントをいただきました!
『バレエ星』
谷ゆき子 立東舎 ¥1980+税
(2017年10月20日発売)
オデット姫の衣装に身を包んだ少女の、ぱっちりと見開いた大きな瞳からこぼれ落ちる涙……。
こうしたたたずまいに懐かしさを覚える人も、直撃世代ではない人も、少女マンガの王道的カタルシスに心震えずにはいられない。すべてを物語る表紙のイラストレーションにピンと来て、衝動買いした方も多いのではないだろうか。
『バレエ星』は1969(昭和44)年に『小学一年生』で連載開始、読者とともに学年をまたぐかたちで継続し、1971(昭和46)年の『小学四年生』で完結をみた作品。その全編を収録したのが本作なのである。
谷ゆき子は1960年代後半から約10年にわたり、小学館の学年誌で多数のバレエマンガを発表し、人気を誇った作家である。だが、当時はいっさい単行本化されておらず、長きにわたり「幻の作家」として語り継がれてきた。
当時、一度でも谷ゆき子の作品を読んだことのある人ならば、忘れようがないだろう。印象的な瞳、少女の憧れをかきたてる美しいバレエのポーズ、細部まで描きこまれたハイセンスなファッション。絵の魅力もずば抜けているが、なんといってもすごいのはジェットコースター級のストーリー運びなのである。
『バレエ星』は、病気によってバレリーナの道を断たれた母の遺志を継ぎ、ヒロイン・かすみちゃんが母の悲願であったオリジナル作品「バレエ星」の完成を目指す物語だ。
肉親との別れやすれ違い、ライバルのいじめくらいでは驚きやしないが、次々にたたみかけるピンチのダイナミックさの衝撃度は前人未踏の領域だ。未読の方の楽しみを奪いたくないので最小限のキーワードを列挙するにとどめるが、バレエマンガなのに滝行!? 目が見えないのに吊り橋を!? 野犬は出るわ、ヘリコプターは出るはダイナマイトは出るわ……。