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『シトラス学園 バニラ』(山本ルンルン)ロングレビュー! バニラのように甘いけど、ちょっぴりビターなこの街に、みんなおいでよ!

2015/04/24


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『シトラス学園 バニラ』
山本ルンルン 宝島社 \890+税
(2015年4月17日発売)


“スモア”というお菓子がある。キャンプのときに食べるアメリカの伝統的なデザートで、枝に刺して焼いたマシュマロとチョコレートをクラッカーにはさんだもの。“some more(もっとちょうだい)”の短縮形“s’more”が名前の由来だ。

ショートオムニバス連作である『シトラス学園』を読んでいると、なぜかスモアを思い出す。
山本ルンルンが描く風景はどこもかしこもかわいらしくてメルヘンに満ちているのだが、そのじつブラックな毒があったり手厳しく現実的な側面もあって。
たとえば、不良少年が人助けをきっかけに、久しぶりにマジメに学校に行ってみる――そんな話も「ちょっとイイ話」ではなく、ラストにはチクリとした苦い笑いが待つ。
きょうだいの世話とアルバイトに勤しむ少年が、優等生だが親の愛情に飢えている女の子の素の表情を知り、心を交わすエピソードもベタベタした友情物語には終わらない。甘さと苦みが混じり合う後味が快感で、「次はどんなお話が!?」とページを繰る指が止まらなくなるのだ。

ジェンダー論(!?)の相違で火花を散らす女の子たち。どっちのタイプもちゃんと尊重するストーリー運びに作者の懐の深さを感じる。

ジェンダー論(!?)の相違で火花を散らす女の子たち。どっちのタイプもちゃんと尊重するストーリー運びに作者の懐の深さを感じる。

目立ちたがりで自信家の美少女、ヒッピー風長髪のバンドマン、学年1位にこだわるガリ勉君もいれば、洋裁好きでませた考え方の女の子も。
だれしも子どもながらに持っている人格の軸がしっかりと描きこまれ、どのキャラクターも立っている!

 

単行本情報

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