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『脳内ポイズンベリー』(水城せとな)ロングレビュー! 完結&実写映画化記念! 恋する女子の”思考擬人化”ラブコメディ!?

2015/05/20


nounai_s05

じつをいえばいちこは、早乙女一筋でここへ至ったわけではない。
早乙女との仲があやふやだった時に、編集の越智宏彦(31)と結婚を前提につきあおうということになっていたのだ。
しかし彼の実家に行こうとする寸前に、早乙女に押しかけられ、結局よりを戻してしまう。
当然越智は傷つく。いちこは謝罪のメールを送るが、それに返事は来なかった。
そして5巻になって、いちこはついに越智と顔をあわせる。あらためて謝るいちこに、越智は自分も悪かったと謝ってくれて――。

脳内会議の面々は、越智も同じように自分で脳内会議をしていると考える。シンパシーに涙するハトコ同様、いちこも涙を流す。

脳内会議の面々は、越智も同じように自分で脳内会議をしていると考える。シンパシーに涙するハトコ同様、いちこも涙を流す。

早乙女とは違い、越智に対しては、いちこの脳内会議は比較的穏やかだ。
当初、いきなりキスをされても、瞬間の感覚担当ハトコでさえ「越智さん、いいひと」で終わっていた。

しかし早乙女に対しては、話がクライマックスに進むにつれ、どんどん脳内会議はヒートアップしていく。
そしていちこが出した結論は……?

早乙女からプレゼントされたオブジェ。制作者の彼いわく「どっちかは 息が出来てない」。それはいちこ? 早乙女? それとも……。

早乙女からプレゼントされたオブジェ。制作者の彼いわく「どっちかは 息が出来てない」。それはいちこ? 早乙女? それとも……。

第2巻で登場した上のオブジェが象徴するものは、とても大きい。
この作者、こういう小物の扱い方が、じつに絶妙なのだ。

真木よう子主演で、現在実写映画も公開されているこの作品は、当5巻で完結する。
そのエンディングを、どう解釈するか。納得するか否か、もしかしたら意見が分かれるかもしれないとも思う。
しかしそれはともかく、エンディング直前に用意されたカタルシスは必見。
ここを味わうことで、なるほど『脳内ポイズンベリー』はこのための物語だったのか、と感じることは間違いないはずだ。

脳内会議の5人のキャラクターたち。
それぞれが性格やルックスに至るまで、非常にみごとに、美しく役割分担されている。このあたり、作者のテクニックはすごい。
だが忘れてならないのは、彼らは誰もがいちこであり、すべての視点はいちこの目を通して行われるということだ。

誰もが持つ自分フィルタのせいで、記憶は常に自分色に染まっている。しかし私たちは、いつでも自分フィルタのそれを見るしかないのだ。
逆に言えば、自分さえ変われば、あっという間に世界は変わる。
それに気がついた時、いちこのたどり着いた答えが、読者それぞれの真実の答えに変わるのかもしれない。


『脳内ポイズンベリー』著者の水城せとな先生から、コメントをいただきました!

著者:水城せとな

最後まで読んでくださった方には、お付き合いいただきありがとうございましたとお礼を申し上げます。
未読の方には、『脳内ポイズンベリー』はラストまで通して読んでいただいて「こういう話だったのか」と伝わる作品じゃないかなと思いますので、
全5巻、サクッと通しで読んで楽しんでいただけるとうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

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