ミステリー作品がコミックになる場合、視覚化されるので小説では発生しない問題が表面化する場合もあるが、本作では全般的にうまくコミック化されていると思う。
第三章「盤上チェイス」などは、京都の地理を知らない読者には、図示されることによって、かえって理解しやすくなっている。
キャラクターも原作のイメージを損なうことなく、二次元化されている(笑顔の美星も、キリっとした美星も!)。
タレーランのマスター(美星の大叔父)などは、もともとマンガ的なキャラクターなので、まったく違和感がない。
第1巻の時点で、原作の第一作の途中まで。“あの”キャラクターが登場したところで「第2巻へつづく」となっており、ヒキも充分。第2巻も9月17日発売予定とのことなので、あまり待たずに続きが読めそうだ。
原作の第1作が、マンガの第1巻と第2巻に分かれる関係か、原作の前半(第3章)に位置する「乳白色にハートを秘める」を後半に持っていくなど、配置にも工夫が凝らされている。
コーヒーに関するトリビアも、あちこちにちりばめられている。
――読んでいると無性にコーヒーが飲みたくなる、そんなマンガだ。
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原作者の岡崎琢磨先生よりコメントをいただきました!
<文・北原尚彦>
1962年、東京生まれ。青山学院大学理工学部物理学科卒。
小説『シャーロック・ホームズの蒐集』(東京創元社)、『ジョン、全裸連盟へ行く』(ハヤカワ文庫)ほか、古書エッセイ『SF奇書コレクション』(東京創元社)、『古本買いまくり漫遊記』(本の雑誌社)ほか、翻訳『ドイル傑作集』全5巻(共編訳/創元推理文庫)ほか、アンソロジー編纂『シャーロック・ホームズの栄冠』(論創社)ほか、多数の著書を持つ。