
自身も“かれら”と同じになるかもしれない恐怖がすぐそこに迫りながらも、部活動の一環として、おもに由紀が提案する「肝試し」「遠足」という名の物資調達や、体育祭や学園祭などにいそしみ、あくまでも学園生活を満喫しようとする姿は、名作映画『ライフ・イズ・ビューティフル』の父グイドと幼い息子ジョズエのようにも見える。
さらに、ひねた見方をすれば、日常系で描かれる「明るく楽しい学園生活」のアンチテーゼではないかとさえ感じさせる。
問題のない学校なんて存在しないことは、誰もが知っている。それでも、学園生活を楽しいとするならば、由紀のように正常ではない精神状態に陥るしかないのでは、と……。

親友の圭とともに、ショッピングモールで引きこもっていた直樹美紀。圭の問いかけに心を揺さぶられる。
しかし、屋上で野菜を育てたり、誰もいない購買部でお菓子を手に入れたり、廃墟と化したショッピングモールでファッションショーを楽しんだりする彼女たちのサバイバルライフには、少々うらやましさも感じる。
女の子らしいかよわさとたくましさ、非常事態だからできる大胆な行動、深い友情や家族への愛情などなど、決して殺伐、鬱々だけではない人間賛歌も大きな魅力なのだ。

決死の覚悟で外界に出た学園生活部。ラジオから聞こえる、他の生存者のものと思しき声は、まるで福音のよう。
アニメでもみごとな仕掛けをめぐらせて、話題沸騰のなかで刊行された第6巻では、学園生活部の面々が、なんと巡ヶ丘学院高校を「卒業」ののち、「進学」を目指している。
守られるだけではない、自立に向けての一歩を踏み出した彼女たちの「キャンパスライフ」がどんなものになるか、次巻への引きもたいへん気になるが、手に汗を握りながら待ちたい。
『がっこうぐらし!』著者の海法紀光(ニトロプラス)先生、千葉サドル先生から、コメントをいただきました!
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。