「惰性67パーセント」の残り33パーセントは、気まぐれに吹き荒れるエロだ。酔っ払った吉澤と北原がマジックブラジャー(服を脱がずブラだけ脱ぐ)したあげく上の服を脱ごうとすれば、自発的な行動だから止めはしない……と悪魔のささやきが勝つ寸前に、真冬のベランダへと逃げ出す伊東と西田。このヘタレ、いや紳士め!
エロマンガみたいなシチュエーション、しかしエロの神は降りてこない。吉澤と西田が禁断の男女タイマンAV鑑賞会に突入しても、ルビコン川を超えられないこそばゆさ。が、超えてしまえばぬるい友だち関係はおしまいで、サークルはクラッシュだ。
エッチなマンガを読むとき、いつも矛盾した想いがせめぎあう。お色気シーンは見たい、でも俺をさしおいてキャラクターがいい目をみたりひどい目に遭ったりするのは見たくない。
そんなワガママを満たす、終わりなき「事前」だけが続くマンガにやっとめぐり会えた……。筆者だけのゆがんだ性癖かと思って予約をサボっていたら、コミックスが売り切れ続出で焦ったのなんの。
女子2人がディルドーを撫で回してローションまみれでくんずほぐれつ、なのに少しもエロくない第3話はすごすぎる。
「男女4人がスキー旅行」とか口にするとムカつく状況や、だまし合いが交錯する処女童貞当てポーカー(勝手に命名)のなかで、「何も起こらない」惰性をキープしてる紙魚丸先生は、逆説的にエロを知り抜くエロマエストロである。
この地上のありとあらゆる青春に、寸止めあれ!
『惰性67パーセント』著者の紙魚丸先生から、コメントをいただきました!
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。