話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『響け!ユーフォニアム』
『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』第3巻
武田綾乃(作) はみ(画) アサダニッキ(キャラクター原案) 宝島社 ¥690+税
(2015年11月12日発売)
北宇治高校に入学した黄前(おうまえ)久美子は、クラスメイトとなった加藤葉月や川島緑輝(サファイア)らの誘いに流されるまま、中学時代と同じく吹奏楽部へと入部した。そのレベルの低さに辟易する久美子だが、新たに顧問となった滝昇(たき・のぼる)の厳しい指導に部員たちは奮起、全国大会を目指す。
まずは吹奏楽コンクール京都府大会を目標に、久美子たちの練習は続く。
武田綾乃による小説『響け!ユーフォニアム』を原作とした、はみによるコミカライズの単行本第3巻が本日、発売となった。
すでに「このマンガがすごい!WEB」上で何度も紹介しており、2015年4月から7月まで放映のTVアニメ版を楽しんだファンも多いと思うので、これ以上の紹介は省き、さっそく本題へと移ろう。
最初に結論を述べてしまうと、第1巻から最新3巻まで変わらぬ本作のキモは「だれもがイメージできる、部活動の最大公約数」にある。
もっと平たく言うと「部活動あるある」を一喜一憂できるドラマに昇華したのが本作だ。
北宇治吹奏楽部の日々の部活動に散りばめられたエピソード群に、吹奏楽部出身者や現役の読者はもちろん、性別や年齢を問わない多くの層が感情移入して一喜一憂し、ときには自己投影を可能としたのが本作の魅力でありすご味である。
一例では、「高校でリ・スタートを考えていたが新しい友人に流されてなんとなくまた吹奏楽部に入ってしまう」主人公・久美子の考えと行動のどこかに、ほとんどの読者が共感してしまうだろう。誘われるがままに同じ中学だった友人と同じ部に入った経験、あるのでは?
ともに吹奏楽を学びながら他校へ行った友人や幼なじみとの再会も、部活動や高校生活ではよくあることだ。個性的な先輩との出会いなど、帰宅部出身者あるいはいま現在の帰宅部員も「部活動ってこうだよね」と思えるはず。