ようやく天使から得た力を現実のものとして認識し、生きる動機を取り戻したミライだが、そんな大きな力を手にしながら望むことは「普通」であった。しかしナッセがミライに力を与えた本当の目的は、「新しい神」の選出であることが明かされる。その候補は、ミライを含めた13人。
ただひとり神に選ばれた者は、あらゆることが可能な力を得るかわりに、選ばれなかった12人は力を返すのだという。
そんな状況に巻きこまれても、依然積極的には力を使おうとしないミライだったが、彼とは対照的に限界まで欲望を暴走させてアイドルとヤリまくるゲスなお笑いタレント・ロドリゲス頓間、さらにそんなロドリゲス頓間を抹殺してしまう「メトロポリマン」(作中で過去にテレビ放映されていたヒーロー番組の主人公)のコスチュームを着た謎の男など、自分と同じ力を持った者たちの存在を認識し、否が応にも生き残りをかけた争いへと巻きこまれていく──。
ささやかな望みとは大きくかけ離れた、自分の身に余る力を得てしまった主人公。だが、第1巻のラストで思わぬ方向から絶対に逃れられない事態を迎えてしまうため、これから先の展開はまさに必見。
そして、自分が幸せになるためには誰かを犠牲にしなくてはいけないのか? という葛藤も見どころとなってくるだろう。
ジャンルとしては、いわゆる「能力バトル」ということになるのかもしれないが、どの神候補も「翼」「赤の矢」「白の矢」(本来は人間に苦しみを与えず安楽死させるための天使の力)のうちのいずれか(あるいはすべて)以外は持っていないという限定的なものであるため、まるでジャンケン勝負のようで、それぞれがどう考えて行動するか、非常に興味をそそられる。
さらに、天使の側の思惑もどう絡むのか……まさに楽しみは尽きないのだが、小畑健と大場つぐみのタッグならば、その予想をもいい意味で裏切ってくれることだろう。
もしかしたら、「能力バトル」ですらない展開が待っていることもありえるのだから。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。