「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の新企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、『坂本ですが?』
クールすぎる男子高校生・坂本を主人公にした学園コメディマンガ『坂本ですが?』。
主人公・坂本の無敵キャラとツッコミ不在のシュールな世界観がじわじわと話題を呼び、本誌『このマンガがすごい!2014』オトコ編ランキング第2位に選出されるなど、各方面から熱~い注目を集めた名(迷)作が、まさかのアニメ化。この4月よりTVアニメが放映開始された。
同作は「animate.tv」主催の「2016春アニメ何観るアンケート」で第1位に輝いていることからも、その期待の高さがうかがえる。
監督を『銀魂』『男子高校生の日常』といったシュールギャグもので定評のある高松信司が務め、坂本役の緑川光をはじめ、石田彰、杉田智和、檜山修之、堀江由衣、田村ゆかり……といった人気声優陣がずらり参加していることもあり、放送開始前から期待の声が上がっていたがーー。
オープニングから、不良男子3人組が校庭でバレーボールをしながらウダウダ、坂本の噂をボヤき~からの~、華麗なジャズサウンドにのせて「廊下に立たされてもスタイリッシュ 圧倒的にクールでスタイリッシュな学生生活を送る、その生徒の名は…」と煽りまくる、小林清志(『妖怪人間ベム』ベム役、『ルパン三世』シリーズの次元大介役)のナレーションに、いきなりハートを掴まれまくり!
坂本のキャラクターデザインも美麗イケメンで、緑川の端正な声も見事にハマりまくり。やっかんだ男子に全裸&靴下姿の画像を撮られそうになっても、教室にスズメバチが乱入しても、あくまで表情を崩さず、「レペティションサイドステップ(反復横跳び)」「マナービーンズ(コンパス豆掴み)」といった決め技でクールに対処。
このアホらしさとカッコよさのギャップは、原作を上まわる中毒性あり。画面のキラキラ加工、華麗でキレのいいアクション、洒脱なジャズ……といったアニメならではの演出も冴えまくり。 カスタマイZとスネオヘアーによるオープニング&エンディング・テーマも完璧で、こりゃ早くも神アニメ(!?)な興奮を禁じえない。
ストーリー的には毎回、坂本がクールに事件を解決してゆくというお決まりのパターンにもかかわらず、次回はどれだけバカバカしいネタをどれだけクールに披露してくれるのか、ワクワクせずにいられない。
普段、アニメはあんまり見ないという方も、この過激なまでに華麗な脱力世界は体験必至。原作のファンはもちろん、未読の人も要チェックだ。
『坂本ですが?』のアニメを観たあとは……
何を隠そう、「このマンガがすごい!WEB」は、マンガの情報サイト! そんなわけで、アニメ『坂本ですが?』を心待ちにしているアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。
『坂本ですが?』佐野菜見
『坂本ですが?』第1巻
佐野菜見 KADOKAWA ¥320+税
(2013年1月15日発売)
勉強・スポーツ万能で容姿端麗のクーレストな男・坂本の華麗なる学園生活を綴ったシュールギャグ。常に真顔で突飛な言動をとる、坂本のブレないキャラクターが読者を引き込み、いまだかつてない中毒性を誘う。
坂本のシュールでエレガンスな動きを、大胆かつ繊細に描ききる著者の技術の高さにはあっぱれを送りたい。コンパスでスズメバチを捕まえるシーンや、反復横飛びをするシーンなど、ひとコマひとコマに対するツッコミはつきないが、容易に読者にその状況を想像させてくれる。そして、ぷっと笑ってしまうのだ。
さらっと読んでももちろんおもしろいが、じつはひとコマの情報量が非常に多い本作。アニメで坂本に魅了されたら、ぜひマンガで“絵になる男”坂本をじっくり堪能してほしい。
『坂本ですが?』3巻の「日刊マンガガイド」での紹介はコチラから!
『男子高校生の日常』山内泰延
『男子高校生の日常』第1巻
山内泰延 スクウェア・エニックス ¥476+税
(2010年2月22日発売)
タイトルどおり、男子高校生の日常を描くショートギャグマンガ。2012年に『坂本ですが?』と同じ、高松監督によりTVアニメ化され、話題になった。
なかでもおすすめは、本作のファンのなかでも傑作と名高い「男子高校生と文学少女」。
「今日は……風が騒がしいな…」
「でも少し…この風…泣いてます…」
「急ごう 風が止む前に」
男子高校生・ヒデノリと文学少女の痛すぎる会話に、胸がざわついてしょうがない! シュールギャグ好きにはたまらない1冊だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69