『坂本ですが?』第3巻
佐野菜見 KADOKAWA/エンターブレイン \620+税
(2014年12月15日発売)
本誌『このマンガがすごい!2014』でオトコ編ランキング第2位に輝いた『坂本ですが?』も、巻数を重ねて3巻目に!
タイトルは知っているけれど、まだ読んだことがない……という人に説明すると、本作は“クール”を超えた“クーレスト”な高校生の学園ドラマだ。
勉強もスポーツもできて、つけいる隙のない坂本は、さまざまな意味で学校の注目のまと。外見こそ七三でメガネと昭和な香り満載ながら、容姿も端麗で、ピシッとしたスタイルがさらに坂本の完全無欠ぶりを物語ってもいる。
そんな彼に、女子も(一部男子も)夢中だが、ただ、ひとつ。言動も行動もあまりに坂本なりの美学がありすぎで、見ようによってはかなりの変人!?
しかし、一見キテレツな振る舞いも、坂本だけにすべてがカッコよくスタイリッシュで、それが結果、周囲の人々を助けて、さらにファンを増やしていくことにも……。
そんな坂本のキャラクターに笑わされたり、坂本を取り巻く人たちの内面のドラマ(美意識の高い窪田君が秀逸!)にほっこりさせられたりと、軽妙な笑いのなかにも珍妙な感動がある本作だが、そのすべてはタイトルが物語っていると言っていいだろう。
“坂本”の部分ではなく、“ですが?”の部分。この“ですが?”の言い様こそ、本作の魅力の真髄だ。
人を喰ったような慇懃無礼な物言いで、一方で優雅さも感じさせる“ですが?”。それこそ坂本のキャラクターで、何事にも動じない姿勢の表われ。ぶれない坂本の姿、ぶれない笑いが、読者を引き込んでいく。
第3巻では、ヤンキーたちさえ恐れさせる、ダブりで三十路越えでバツ2(!)と噂の先輩・深瀬に目をつけられ、坂本が窮地に!?
おかしなカッコよさと、カッコいいおかしさは、ますますパワーアップ。そんな3巻“ですが?”。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。