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六つ子のおそまつ(?)なコスプレ、ニートな美少女戦士 参上! マンガから読みとるコスプレ文化の歴史【B級ニュース】

2016/04/19


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「おそ松さん、セーラームーンのコスプレをする」について。


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月刊YOU(ユー) 2016年5月号
集英社 ¥509+税
(2016年4月15日発売)

昨年10月に第1話が放映されると、たちまちアニメ・クラスタのあいだで爆発的な人気を博したのがアニメ『おそ松さん』である。
先月、大人気のうちに最終回を迎えたものの、 シラタマサコによるマンガ版は集英社「月刊YOU」で引き続き好評連載中だ。

4月15日発売の「月刊YOU」5月号では、なんと『おそ松さん』の六つ子たちが『美少女戦士セーラームーン』のセーラー戦士に扮するイラストが表紙を飾った。
おそ松がセーラームーン(=月野うさぎ)、カラ松がセーラーマーキュリー(=水野亜美)、一松がセーラーマーズ(=火野レイ)、チョロ松がセーラージュピター(=木野まこと)、十四松がセーラーヴィーナス(=愛野美奈子)、トド松がセーラーちびムーン(=ちびうさ)のコスプレをしているのだ。

これは「美少女戦士セーラームーン展」開催を記念してのコラボ企画なのだが、そもそも『美少女戦士セーラームーン』は講談社「なかよし」に掲載されていた作品であることを考えると、出版社の垣根を越えた珍しいコラボとなっている。

また、『月刊YOU』5月号には、あの萩尾望都が初めて原作を手がける『天使かもしれない』が連載をスタートさせているので、がぜん注目度は高いはず。

それにしても、この表紙の絵ヅラの破壊力!
赤塚ギャグマンガの狂気と破壊性をぞんぶんに継承しているといえるだろう。

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『このマンガがすごい! comics 「おそ松くん」とアカツカ怪作劇場』
赤塚不二夫 宝島社 ¥690+税
(2016年4月21日発売)

なお、宝島社から刊行される『「おそ松くん」とアカツカ怪作劇場』では、シンナー乱交やオ○ンコ、46歳の童貞などなど、赤塚ギャグの愛と狂気にフォーカスしているので、ぜひともそちらも参照してほしい。 といったところで今回は、“破壊力”を感じさせるコスプレ特集だ。

コレを読めば、きっとアナタの思考回路はショート寸前ッ!


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『コンプレックス・エイジ』第1巻
佐久間結衣 講談社 ¥570+税
(2014年8月22日発売)

『コンプレックス・エイジ』は、コスプレとコスプレ業界を題材にした作品である。

主人公の片浦渚は26歳のOL。高校時代から趣味でコスプレをしており、界隈では名の知られたコスプレイヤーである。
趣味と自己実現の狭間で揺れる主人公のセンチメントがテーマとなる本作は、コスプレイヤー業界への取材も綿密。
主人公の目を通じて、現代コスプレ事情が描かれる。現役のレイヤーが見れば、「あるある」と納得する描写も数多いはずだ。

そして本作は、楽しく華やかな見た目の部分だけではなく、あまり外部に漏れることのない内部事情にも踏みこんでいく。
コスプレ人口は増えたとはいえ、まだまだ狭い世界。その「コスプレ村」のなかで、人間関係がギスギスしたり、聞こえよがしに悪口を言ったり……と、コスプレ者たちのダークサイドにも焦点が当てられる。
対人関係に絡め取られて闇落ちする者も、衣装の細部までこだわりまくる完コピ・レイヤーの執着も、まさしく狂気。

つきつめればどの業界も修羅の道、である。


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『げんしけん』第1巻
木尾士目 講談社 ¥543+税
(2002年12月18日発売)

ゼロ年代のオタク・サークルを題材にした代表作といえば『げんしけん』だ。
現在ではその続編にあたる『げんしけん 二代目』が連載中である。コミフェス(コミケがモデル)や同人誌制作、秋葉原の同人ショップといったオタク界隈を描いて人気を博し、アニメ化もされた。

『二代目』になってからは、女装男子の波戸が「げんしけん」に入会。彼が女性キャラのコスをやるエピソードも描かれる。
最近は、コミケなどでも女装コスを以前よりも多く目にする機会が増えたが、それにともなってトイレや更衣室と性別の問題が発生しつつある。
「性同一性障害」と「女装趣味」は根本的に別物なのだが、それを判断しうる根拠が当人の「自認」にしかなく、第三者には判断が難しいところが難題だ。『二代目』の波戸絡みのエピソードではそのあたりが語られるので、LGBTについても考えさせられる内容となっている。

様々なジャンルのマイノリティを受け入れることで発展してきたオタク界隈は、はじめから“なんでもOK”ではなく、その都度に“文化の衝突”を体験し、反発や葛藤を繰り返して現在のダイバーシティを獲得してきた。『二代目』では、その最新の現在進行形を見ることができる。


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『いちきゅーきゅーぺけ』第2巻
甘詰留太 白泉社 ¥600+税
(2015年12月25日発売)

コミケの参加者が20万人を突破したのは1990年に入ってから(現在は50万人超)。
オタク人口のパンデミックが起きた90年代を題材にした作品が『いちきゅーきゅーぺけ』だ。

1994年に大学入学を機に上京した主人公・中井純平は、オタク系サークル「W大ひねくれっ子マンガ集団」に入部。同人誌でエロマンガを描くことを志す。

90年代のオタク界隈の流行や風俗がふんだんに描かれるので、アラフォー世代には刺さりまくり必至である。
第2巻ではコミケシーンが描かれるが、現在の東京国際展示場(東京ビッグサイト)ではなく、まだ晴海の東京国際見本市会場で開催されているところからも時代を感じさせる。
そしてサークルの夏合宿では、宴会の余興として、チビでデブの純平がセーラー戦士風のコスプレをさせられるのだ。
コスプレをして登場するときの純平の表情が、まんざらでもなさそうなところが見どころ!?

この破壊力、なかなかのものである。


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『男装少女×コスプレジェニック』第1巻
御子柴トミィ(著) 御子紫はぐ(案) KADOKAWA ¥620+税
(2012年9月1日発売)

『おそ松さん』の表紙イラスト、『げんしけん 二代目』の波戸、『いちきゅーぺけぺけ』の中井のように、男性が女装するコスプレだけでなく、その反対ももちろんある。
つまり、女性が男装コスをする作品だ。

『男装少女×コスプレジェニック』は、高身長の女子高生・あさきが、友人・ゆうこに勧められてコスプレの世界に足を踏み入れていくストーリー。

乙女ゲーム『マジ・ガチ★トゥナイト』に出てくるキャラクター「桜坂」様のコスプレを見たあさきは衝撃を受け、レイヤーのキリヒナにあこがれ、自分も男装コスをするようになる。で、その有名美形レイヤーがじつは同じ学校の先輩だったりするわけだ。

本作は「乙女のための男装コスプレコミック」と銘打っているだけあって、アニメイトコスプレショップ「ACOS」とコスプレコミュニティサイト「Cure」が全面協力している。
ウィッグの手入れの仕方など、まるで「マイナースポーツを題材にしたスポーツマンガ」のようにチュートリアル部分が充実している。


現在、コスプレは世間的に広く認知されるようになった。色眼鏡で見られることも、ないわけではないけれど、以前よりは確実に減っている。ハードルは低くなったので、興味を持ったらこの機会にコスプレ・デビューしてみてはどうでしょう。
それこそ『おそ松さん』なんかは、入門編として手を出しやすいかも!?

「おそ松さん風セーラー戦士」コスプレは……これは上級者向けか。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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