この状況でもリンはちゃんと小学校に通い、運動会などのイベント参加も積極的だ。
担任の伊藤先生から思わず同情され、消しゴムも買えない貧しさながら、学校でのリンは天真爛漫で成績も抜群だ。お嬢様の金見美恵子に意地悪されても、わんぱくな関口亮にからかわれても、まったく卑屈にならないリンは、いつの間にか応援される立場になっている。
ここから発生しつつある、初々しい三角関係のゆくえも気になるところだ。
街の大人もみんな優しい。
リンの店主としてのプライドを傷つけないで困難から救ってあげるために、さまざまなやり方で力を貸したり、知らないうちにリンを励ましたりしている。その好意を喜んで受けとる無邪気なリンを見ていると、だれもが優しくなる。
伊藤先生も頼りないし、たい焼き屋の店長は無愛想だけど、少しずつできることを持ちよれば、女の子ひとりが笑顔で過ごすことくらいは叶えてあげられる。読んでいるほうもなんだか元気になってしまう。
特にクリスマスのエピソードは泣かせるもので、描き下ろされたその後の話もまた感動を呼ぶ。
社会問題化しつつある、現実の「子どもの貧困」はこんなものではない、とわかっている。なんせリンは「幼女」といえる年齢だから、どう考えてもこのひとり暮らしは危険だ。
なぜ行政で救わないのか、と批判するのは簡単かもしれないが、それでも、リンには自立して両親が遺したお店で働く幸せを手放さないでほしい。そんな気持ちになる。
せめてマンガでは、日本にこんなのどかな時代や、温かい地域の人間関係があったのだと、夢見てもいいのではないか……。
4コマというジャンルが隆盛化し、ときに先鋭的なものやハードなテーマのものも出てきており、それはそれでおもしろいが、だれもが読んでもわかりやすく、健全な4コマというのは貴重だ。
「ビンボーだけど明るい小学生ライフ」に、プライスレスなぬくもりをもらってはいかが?
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。