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『AIの遺電子』(山田胡瓜)ロングレビュー! 心を持った“道具”たちの「病」を治す闇医者が魂の座を問う

2016/06/01


話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!

今回紹介するのは『AIの遺電子』

『AIの遺電子』著者の山田胡瓜先生から、コメントをいただきました!

著者:山田胡瓜

興味を持って読んでいただけたらとてもうれしいです。
毎回読み切りでどこからでも読めるので、「週チャン」本誌でもどうぞよろしくおねがいします。

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『AIの遺電子』第1巻
山田胡瓜 秋田書店 ¥429+税
(2016年4月8日発売)


単行本の帯に付けられたキャッチフレーズは「近未来版ブラック・ジャック」。

舞台となるのは、高度にテクノロジーの発達した近未来。といっても、いかにもSF的な建築物が建ち並ぶような世界ではなく、現代と同じように人々が社会生活を送っている様子が描かれている。
ただひとつ大きく違うのは、「ヒューマノイド」と呼ばれる、感情を持った人造人間が、完全に社会に溶けこむように生活しているという点だ。

ヒューマノイドたちは人間と同等に、いや、むしろ人間ではないからこそ、自らのアイデンティティについて考える場面が登場する。主人公の須堂は、そんな彼らに向きあい、ヒューマノイドに適切な“治療”をする「新医者」である。

本来は禁じられている、ヒューマノイドの人格の複製。読者にも「私」とは何かを問いかける

本来は禁じられている、ヒューマノイドの人格の複製。読者にも「私」とは何かを問いかける

一話完結型で進行するヒューマノイドと医者の物語──それが「近未来版ブラック・ジャック」と言われるゆえんであるが、もちろんテイストとして納得できるところもあるものの、須堂は神懸かった医療技術を発揮するわけでもなければ、法外な報酬を要求することもない。
なので、必要以上にブラック・ジャックを意識して本作を読む必要はない。

それよりも注目するべき点は、生きていくうえでだれもが抱えるであろう“心の揺れ”と、それを抱えるのが人間でもなく、かといって単純に機械でもない“存在の揺れ”を常にはらんだヒューマノイドであるということだろう。
この組みあわせの妙が、決して大きな動きのない、ともすれば淡泊とも受けとられるかもしれない物語に、独特の波紋を広げることに成功している。

単行本情報

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