太平洋戦争において、戦闘が主に行われたのは、中国、東南アジア、南太平洋など。名古屋をはじめとする本州は、非戦闘員が居住する「銃後」であった。しかし、空襲によって、「銃後」は一瞬にして「戦地」に様変わりしてしまう。そして、銃後の暮らしが丁寧に描写されているからこそ、その恐ろしさは真に迫る。
1巻ラスト、突如として名古屋上空に航空機が姿を現す。まだ空襲は描かれていないが、その機影に読者は「起こりうる最悪の未来」をいやがおうにも予測する。
空襲によって日本中の人々が傷ついた。傷はいつしか癒されなければならないが、しかしそれは「忘れる」と同義ではない。過去への視座を持ち続けるには、本作のような「過去の生活者からの視座」が標石となる。先人の足跡を、消さないように。そのフォルムを慈しみ指でなぞるような作品である。
『あとかたの街』著者のおざわゆき先生から、コメントをいただきました!
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。