「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、『響け!ユーフォニアム2』
いえーい! 続編は好きですかー!?
オレたちの心に響く続編といえば、「エリカが例えてあげる★」の名ゼリフでおなじみのドラマ『家なき子2』とか、リボンっ子だったアラサー世代のカラオケでは鉄板の「だっけっど 気になる~♪」でおなじみ、『ママレード・ボーイ』の続編マンガ『ママレード・ボーイ little』もある。アンサーソングも続編のジャンルに入るなら、「ちくしょう、やっぱ言えねぇや」のあの曲だって忘れらんねぇ。ちゃんと飯食ってるか?
まぁそんなわけで、アニメ『響け!ユーフォニアム』の続編が、まもなくクライマックスを迎える。
中学に引き続き、「なんとなく」高校でも吹奏楽部に入部し、ユーフォニアムを担当することになった久美子。しかし、久美子と同じ中学出身で、プロ奏者の父親を持つトランペット担当の麗奈は、音楽に対してストイック。正反対の2人だけど、お互いが気になる。強い引力で結ばれた2人は、北宇治高校吹奏楽部で切磋琢磨しながら青春時代を過ごす。
前シリーズの最終回で、見事に吹奏楽コンクール京都府大会で金賞を受賞した北宇治高校吹奏楽部。今作では、全国大会への切符を手に入れるべく、部員たちが一層熱い練習に励む関西大会までの日々が描かれる。
しかし、その第1話からどうやら暗雲がたちこめる。一度退部した子が再入部を希望しているらしく……。ここに、「2年生問題」勃発! どうなる北宇治高校吹奏楽部!?
主人公の久美子と、よきライバルの麗奈に加え、同級生の緑輝(サファイア、通称:みどり)、葉月たちは、今作でも中心キャラクターとして大活躍。
3年生として部員をひっぱるあすか先輩、晴香先輩も健在だ。そして新キャラも続々登場。「2年生問題」の台風の目となりそうなのが、フルート担当の希美だ。顧問の滝先生の大学時代の友人で、派手でコミュ力の高いパーカッション指導者、橋本の活躍も大きい。
いやはや、「部活」という響きだけで遠い記憶を思い出して胸キュンしてしまう今日この頃、10代の青少年が一生懸命がんばっているというだけで泣けてくる。甲子園とか、マジでやばいじゃないっすか。
だけど「青春」はよい思い出ばかりじゃないから、リアルタイムで青春を過ごしている世代を見る目には、複雑な感情も混じる。大人が青春時代を懐かしむのは、なんか「喉元過ぎれば……」的でずるいと、ちょっと思う。
熱量は一瞬に凝固する。そしてその熱は永遠には続かない。だから過ぎ去った時間を、人は「思い出」と呼んで振りかえりたがる。輝いているのはいつも、後ろを振り返る人よりも、目の前の一瞬に情熱を傾ける人だ。
「そして、次の曲が始まるのです!」
久美子たちの第2章の幕が開く。全国大会という夢の大舞台を目指す彼女たちの姿から、目の前のことに熱中する元気をもらいたい。
『響け!ユーフォニアム2』のアニメを観たあとに……
何を隠そう、「このマンガがすごい!WEB」は、マンガの情報サイト! そんなわけで、アニメ『響け!ユーフォニアム2』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。
『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』
武田綾乃(作) はみ(画) アサダニッキ(キャラクター原案)
『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』第1巻
武田綾乃(作) はみ(画) アサダニッキ(キャラクター原案)
宝島社 ¥690+税
(2016年9月8日発売)
『響け! ユーフォニアム』の原作は、武田綾乃原作の小説だ。「このマンガがすごい!WEB」で、コミカライズもされている。
前シリーズ『北宇治高校吹奏楽部へようこそ』では、友だちに誘われるがまま吹奏楽部に入部した主人公の久美子が、部員たちとぶつかりあいながら全国大会を目指すまでの葛藤や対立が描かれる。そこを乗り越えたキャラクターたちがラストの京都府大会のシーンで魅せる演奏シーンは必見!
そして第2期の『北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』は、10月から放送のアニメ続編と重なる。関西大会への切符を手にした北宇治高校吹奏楽部、ついに全国大会を目指して練習を始めるが――。
アニメの予習・復習としても楽しめるので、ぜひ手に取ってみてほしい。
『響け!ユーフォニアム』のコミカライズ以外に、このマンガもおすすめ!
『tutti!』片桐了
『tutti!』第1巻
片桐了 小学館 ¥429+税
(2015年8月18日発売)
主人公は、音楽が好きでたまらないのに、あることがきっかけで楽器を辞めてしまった頼成圭斗(らいじょう・けいと)。音楽と決別して高校生活を送ると決心したものの、入学した高校の吹奏楽部はあまりに下手。耐えきれなくなった圭斗は、いつの間にか吹奏楽部を指導するようになる。
吹奏楽部院たちは圭斗を手放すまいと、あの手この手で引き留めようとする。そして「最高の拍手をもらったら音楽を辞める」 という条件で、圭斗は吹奏楽部に正式に入部。
その矢先、圭斗はなぜ吹奏楽部がここまで弱小なのかを知る。校内には強豪として有名なオーケストラ部があり、楽器の上手い生徒はオーケストラ部へ入部してしまうのだ。
圭斗のちょっとしたふるまいから、音楽への愛がこぼれ出ちゃっているのが滑稽で笑える。一風変わった視点で描かれた本作は、元・吹奏楽部でない読者にもおすすめだ。
『青空エール』河原和音
『青空エール』第1巻
河原和音 集英社 ¥400+税
(2008年12月25日発売)
吹奏楽部のヒロインが登場する少女マンガといえば、王道は『青空エール』でしょう!
野球と吹奏楽部の入門・白翔高校に入学したつばさの夢は、甲子園のアルプスで自分が演奏するトランペットの音を飛ばすこと。幼い頃に、テレビで見た白翔高校吹奏楽部の雄姿に憧れているのだ。
同級生の山田君は、野球部に入部。彼は甲子園出場を夢見ている。違う部活で、同じ夢を追いかける2人のさわやかなラブストーリーも見逃せない!
精鋭ぞろいの吹奏楽部員についていくのに精一杯のつばさが、3年間で大きな成長を遂げる軌跡も感動的。足掛け8年、コミックス全19巻の大作だが、つばさの純粋さと一生懸命さに引き込まれて、一気に読破できること間違いなし!
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。