「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の新企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、
劇場版『響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』
2015年4月に京都アニメーションによりTVアニメ化され、アニメ続編の制作も決定している『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』。
原作は、第8回「日本ラブストーリー大賞」隠し玉作品『今日、きみと息をする。』(宝島社)でデビューした武田綾乃氏。現在は同社の「このマンガがすごい!WEB」でコミカライズも連載中だ。
TVアニメ化で一気に人気に火がついた本作だが、ついにファン待望の劇場版が2016年4月23日(土)より公開される!
流されやすい女子・久美子は、友人に誘われるまま中学に引き続き、高校でも吹奏楽部に入部する。久美子が入部した北宇治高校吹奏楽部は、お世辞にもうまいとはいえない演奏レベルだが、吹奏楽部顧問・滝先生に目標の設定を促され、なんと「全国大会出場」を目指すことに。
そこから、滝先生のスパルタ特訓が始まるのだが、それぞれ思いはあれど、みな必死にくらいついていく。
そして、その日はやってくる。コンクールのメンバーを決める「オーディション」だ。
とくにトランペットパートにはソロがある。ソロへの思い入れが強いのは、3年生の香織と、久美子と同じ中学だった1年生の麗奈。
香織にとって今年が最後の夏であることを踏まえても、久美子は「特別」な存在になりたいと願う麗奈の背中を押す。一方で、香織を慕う2年生の優子は、香織にソロを吹いてほしいと強く願う。
瞳を閉じてずっと聴いていたくなるような音色の香織、目が覚めるような音色の麗奈。ソロパートを吹くのは――。
盲目的ともいえる優子の香織への想いには、個人的にもうるっときた。これほどまで後輩に慕われる香織の人となりを、優子の流した涙がすべて物語る。若いっていいな、青春っていいな。
劇場版の新規カットの目玉のひとつは、なんといってもマーチングシーン。劇場版ではフルで曲(「ライディーン」)が流れる。もちろん、葉月が苦戦していた「謎ステップ」もじっくり見られるのだ。
マーチングの衣装はかわいいし、スクリーンで見ると演奏は迫力満点! このシーン見たさに劇場に通ってしまうファンがいても不思議ではない。
そして、ここから彼女たちの快進撃が始まるのだ。
「くやしくって死にそう。」
「くやしい」という気持ちは、とてつもないエネルギーを生む。若くてみずみずしい彼女たちの可能性は無限大。ぜひ劇場に足を運んで、「くやしい」の向こう側の景色を見ていただきたい。
劇場版『響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』を観たあとは……
何を隠そう、「このマンガがすごい!WEB」は、マンガの情報サイト! そんなわけで、劇場版『響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』を心待ちにしているアナタに、読んでほしいマンガを紹介しちゃいますよっ。
『響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』
武田綾乃(作) はみ(画) アサダニッキ(キャラクター原案)
『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』第1巻
武田綾乃(作) はみ(画) アサダニッキ(キャラクター原案)
宝島社 ¥690+税
(2015年4月3日発売)
『響け! ユーフォニアム』のコミカライズを担当しているのが、吹奏楽部(トロンボーン)経験者で、京都に住んでいたこともあるはみ氏とあって、とにかくリアリティがすごい!
音楽系部活の経験者なら、共感できる部分がたくさんあるはずだ。
第1巻でとくに好きなエピソードは、パート練習を経ての初めての合奏で先生に怒られるシーン。パートごとのクオリティ、もっというと個人の習熟度が全然違うのだ。
実際問題、みんながみんな同じ気持ちで部活動に青春を費やすというのは難しい。しかしそれでも最初に、「全国大会出場」という目標を“みんなで”立てたからには、もうやるしかない!
「うまくなりたい」「先生を見返したい」……部活動に打ちこむ思いのカタチは違えど、みんなが本気になっていく姿には胸が躍らされる。
高校生活という短い3年間をどう過ごすのかは彼女たち次第。
「みなさんが普段若さにかまけてドブに捨てている時間をかき集めれば この程度の練習量は余裕ですよ」
という吹奏楽部顧問の滝先生の言葉には、しびれました。
現在は、『響け!ユーフォニアム』第2期のマンガ連載中!(4月22日第8話更新)
『吹彩 -SUISAI-』雪丸もえ
『吹彩 -SUISAI-』第1巻
雪丸もえ 集英社 ¥420+税
(2015年12月25日発売)
「りぼん」で連載中の吹奏楽部マンガ。主人公は、中学では陸上部だった体育会系の女の子・佐野うらら。もちろん、楽器は初心者だ。
そんな音楽とは無縁の生活を送ってきたうららが、高校に入学して吹奏楽部に入部し、フルートに挑戦することに。
初心者がフルートにあこがれるのも、なんだかわかるなあ。フルートってやっぱり可憐な美少女が弾いていそうなイメージがあるし、美しいソプラノを奏でるのはとても楽しそうだ。
肺活量には自信ありなうららだが、やっぱりフルートは甘くない。最初は音すら出ない。だからこそたとえ汚い音でも、音が鳴った瞬間はとびきりうれしい!
初心者だからのびしろは人一倍、これからうららがどんどん上達していくのだろう。もちろん恋愛マンガ好きとしては、サックスパートの黒髪イケメン・神崎湊との恋愛模様にも注目したい。
『聲の形』大今良時
『聲の形』第1巻
大今良時 講談社 ¥429+税
(2013年11月15日発売)
『このマンガがすごい!2015』オトコ編第1位を獲得した本作。『響け!ユーフォニアム』と同じく、京都アニメーション製作の劇場版アニメの公開も決まっている。2016年9月17日公開予定ということで、こちらも楽しみだ。
聴覚障がいを持つ少女・西宮硝子は、やんちゃなガキ大将・石田将也を中心に、小学校でいじめを受けていた。しかし、学級裁判でひとり罪を背負わされた将也が、今度はいじめのターゲットにされる。
それから月日は流れ、高校生になった2人は偶然再会することになるが……。
「いじめ」という重くなりがちなテーマを扱いながら、恋愛、友情、青春といった要素をうまく入れ込ませて、「エンタメ」として読者に読ませているのが、すごい!
ストーリーには細かな伏線が貼られているので、1巻~完結7巻まで読み終えたら、ぜひもう一度読んでみてほしい。きっと新たな発見があるはずだ。
そして、著者の優れた人間観察力に驚くはず。
『聲の形』第4巻と第7巻の日刊マンガガイドでの紹介はコチラとコチラから!
著者インタビューはコチラとコチラから!
<文・穂高茉莉>
楽器店店員。『このマンガがすごい!2016』、「このマンガがすごい!WEB」のアンケートに参加中。最近少女マンガのレビューのお仕事もちょこちょこと始めました。>