複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が未来を予言していた件」について。
『僕たちの好きなバック・トゥ・ザ・フューチャー 映画『バック・イン・タイム』DVD付き』
僕たちの好きなBTTF編集部 宝島社 ¥1,800+税
(2016年11月5日発売)
先週、大リーグでシカゴ・カブスが4勝3敗でクリーブランド・インディアンスに勝利し、ワールドシリーズ優勝を決めた。
カブスが優勝したのは、なんと1908年以来の108年ぶり。
1908(明治41)年といえば、愛新覚羅溥儀が宣統帝として清のラストエンペラーに即位した年である。いつの時代だよ!
さて、カブス優勝と同時ににわかに注目を集めたのが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』だ。
作中の「現在」(=1985年)から「未来」(=2015年)へとタイムスリップしたマーティ・マクフライは、街頭の巨大スクリーンでワールドシリーズの結果を知るのだが、そのときに「カブスが優勝だって!?」と驚いている。
映画公開の1989年時点ですでにカブスは81年も優勝から遠ざかっており、「カブス=優勝できない」が定着していればこそのネタであったが、現実の世界ではわずか1年のタイムラグで実際にカブスが優勝をなしとげたわけだ。この「バック・トゥ・ザ・フューチャーの予言」のニアミスが注目され、「こいつはコトだ!」ってことで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が話題を集めたのである。
カブス優勝に限らず、この作品にはいたるところに小ネタが仕込まれているので、見返すたびにあたらしい発見があるに違いない。
そんなおり、宝島社からちょうど関連書籍『僕たちの好きなバック・トゥ・ザ・フューチャー 映画『バック・イン・タイム』DVD付き』が発売された。
日本未公開のドキュメント映画『バック・イン・タイム』のDVDが付録で付き、さらに巻末にはアメコミ『マーティとドクが出会った日』まで収録されているので、同シリーズをよりディープに楽しむには最適の一冊となっている。
この本を読んでから同シリーズを鑑賞すれば、きっとあたらしい“気づき”が得られるはずだ。
とはいえ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズは過去と未来を行ったり来たり、あっという間に知らない世界な旅ガラス。作中で訪れるのがどのような時代なのか知っておいたほうが、さらに作品を楽しめることは確かだ。
そこで今回は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のPART3までに舞台となる時代をマンガで解説。キミのタイムをボカンしよう!
『シティーハンター COMPLETE EDITION』 第1巻
北条司 徳間書店 ¥933+税
(2003年12月15日発売)
まず起点となるのは1985年。
この年9月にプラザ合意が発表され、これを契機に日本はバブル経済へと突入していく。
この年に連載がスタートしたのが北条司『シティーハンター』だ。
新宿で暗殺やボディーガードを請け負う「シティーハンター」こと冴羽リョウ(編集部注:「リョウ」はけものへんに「尞」)が活躍する。
当時の掲載誌「週刊少年ジャンプ」は『キン肉マン』、『キャプテン翼』、『ドラゴンボール』、『北斗の拳』などが掲載され、発行部数が400万部を超えるマンモス雑誌だったが、少年マンガの主人公でありながら殺人を厭わないハードボイルドな面、北条司の描く美女、リョウの「もっこり」といったアダルトな雰囲気が受け、人気作品へと成長する。
『まんが道』 第1巻
藤子不二雄A 小学館 ¥1,400+税
(2012年11月20日発売)
そしてデロリアンがアスファルト、タイヤを切りつけながら暗闇を走り抜けていった先は、1955年となる。
1955年はどういった年か?
それは、藤子不二雄(藤本弘と安孫子素雄)の2人が故郷に帰省したことで各社の締め切りを落としまくって、マンガ業界から干される年である!
このときの状況は『まんが道』(藤子不二雄A)に詳しい。
前年に上京してトキワ荘に入居した才野茂(藤本弘がモデル)と満賀道雄(安孫子素雄がモデル)は、1955年の正月に富山に帰省すると、それまでの疲れがドッと出たのか、まったく仕事が手につかない。なんと10本中8本の原稿を落としたというから、そりゃあまあ「オイコラ」のひとつくらい言われますがな。
マーティがカルバン・クラインのパンツをロレインにほめられながらイチャコラしているあいだに、日本マンガ界のレジェンドたちは不遇をかこっていたのだ。
1955年から1985年に戻ったマーティは、今度は2015年に行く。ここからが『~PART2』の世界である。
2015年といえば昨年。つい先ごろなので、みなさんも記憶にあたらしいだろう。
昨年は……あれ? えっと、なにがあったっけ?
いや、ちょっと待って。全然思い出せない。
フジツウサン、コニチワー。
そんなアナタには、このtagから「B級ニュース」の過去記事を参照してもらいたい。 そっかぁ、「宝島」が休刊したなぁ……。 宇宙的に重要な意味がある年です!
『荒野のグルメ』 第1巻
久住昌之(作) 土山しげる(画) 日本文芸社 ¥1,200+税
(2015年4月9日発売)
2015年から1985年に戻り、再び1955年に戻って“未来”の問題を解決するのが『PART2』。そして『PART3』は1885年が舞台となる。
カブスは1871年創立なので、このときすでに存在していたのだから恐れいる。
1885年は西部開拓時代。マーティはこの時代にクリント・イーストウッドを名乗る。西部劇ならではのパロディというわけだ。
イーストウッドでパロディとなれば『荒野のグルメ』(久住昌之・作、土山しげる・画)の出番である。
舞台は現代、主役は中年サラリーマンだが、都会を荒野に見立て、荒野のオアシスこと小料理屋「よし野」で晩酌をたしなむ。
タイトルがイーストウッドの俳優としての出世作『荒野の用心棒』にちなんでいるのはもちろん、主人公の名前の「東森」も「イーストウッド」に由来している。
それにしても『PART2』でスピルバーグの息子が『ジョーズ19』の監督をやる小ネタがあったが、2016年現在でスピルバーグ自身がいまだに現役で『BFG』を公開し、イーストウッドも『ハドソン川の奇跡』を公開。名作を連発して名監督の名をほしいままにしているのだから、未来はわからないものである。
といったわけで、みんなで未来予測!
12月10日には『このマンガがすごい! 2017』本誌がいよいよ今年も発売予定。オトコ編1位とオンナ編1位を、ぜひ予想してみよう!
アナタの予想、ハッシュタグ「#このマン2017オトコ」「#このマン2017オンナ」をつけて、ぜひツイッターでつぶやいてくださいッ!!
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama