今回、マンガを手がけているのは、「BE・LOVE」(講談社)にて連載していた『すくってごらん』が『このマンガがすごい!2015』オンナ編第14位を獲得した大谷紀子。
人気ノベルのコミカライズといえば、原作ファンから「登場人物がイメージと違う!」といった声も起こりがちだが、本作においては「高寿=シャイで誠実」「愛美=かわいいけど、じつはチャキチャキした一面があって食いしん坊」というキャラクター像から想像していたとおりの2人で、繊細で美しい絵柄も原作の透明でやわらかな空気とみごとにマッチしている。
「異なる次元に生きる男女の30日限定の運命の恋」という「恋愛×SF」な世界観は、最近では『君の名は。』や『orange』、古典的なところでは手塚治虫『火の鳥』や藤子・F・不二雄のSF短編『ノスタル爺』などが思い出される。
壮大な時間の輪廻を超えて出会った運命の2人なのに、ずっといっしょにいることはできない。そんなSFならではの「奇跡」と「切なさ」と、恋愛や青春の刹那なきらめきがドラマチックな相乗効果を生み出していて、センチメンタルが止まらない!
京都が舞台の作品ということで、鴨川、京都市立動物園、白川の一本橋、三条や伏見の商店街……など、京都の日常に根ざした街の情景がリアルに描かれているのも、コミックならではのお楽しみ。
映画版のオフィシャルサイトにはロケマップも掲載されており、ファンの間で聖地巡礼が盛り上がることは間違いない。
昨今の安易なメディアミックス・ブームには、正直閉口することもあるが、本作のように当初から映画化やコミカライズを想定して描かれたようなキャッチーな作品ならば、あえて相乗効果を楽しんでみるのが正解。
マンガから入るか、あるいは小説か、映画か? どれを入り口にしても楽しめること間違いナシの「一粒で三度おいしい」作品だ。
★映画公開記念!! なんと本日夜から『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』コミカライズを毎日1話ずつ無料公開しちゃいます! じつは、このマンガを読み逃してたという人は、ぜひこの機会に第1話からチェックしてください♪
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<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69