第4位(102ポイント)
『ゴールデンゴールド』 堀尾省太
『ゴールデンゴールド』
堀尾省太 講談社
福の神伝説が残る瀬戸内の寧島(ねいじま)の海岸で女子中学生・早坂琉花(はやさか・るか)が奇妙な物体=フクノカミを拾ったことから、島に数々の“奇跡”が起こりはじめた。
琉花の祖母が元気になり、家業の商店はコンビニになり……低いなりに安定していたはずの島の経済バランスは崩壊していく。いっぽう女流作家の黒蓮(くろはす)は、島外の人間にしか認識できないフクノカミの正体を探るべく調査を始める。
第1巻リリース時から予測不能の展開でひきつけたストーリー展開はさらにヒートアップ。それでいて、前作『刻々』でも定評があった著者のけっしてゆるがない骨太な世界設定も健在で、早く続きが読みたいとウズウズさせられます。
オススメボイス!
■うっすらとした不気味さと奇妙なかわいげを宿したフクノカミが、島に住む人々をじわじわと波立たせていく。何か得体のしれない事態が進みつつある……。その不穏な空気がたまらない(稲垣高広/ブログ「藤子不二雄ファンはここにいる」管理人)
■第2巻にして不穏エンタメともいうべき堀尾節が全開!(奈良崎コロスケ/博奕・マンガ・映画の3本立てライター)
■圧倒的なおもしろさ! 「フクノカミ」の出現により瀬戸内海に浮かぶ島は欲望の渦に飲み込まれてゆく。金とはいったいなんなのか。金が金を呼び、そして血を呼びはじめた。冒頭からそこかしこに散りばめられた伏線がひもとかれていく。マネーメイキングスリラーとでも呼びたい今もっとも目が離せない作品と断言!(今村方哉/レコード会社勤務)
■ますます目が離せない展開に。まだまだ謎は深そう。続きを早く……(福丸 泰幸/喜久屋書店漫画館京都店 店長)
「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ!
第5位(90ポイント)
『BEASTARS』 板垣巴留
『BEASTARS』
板垣巴留 秋田書店
肉食獣と草食獣が共存する世界にある高校・チェリートン学園の演劇部員、アルパカのテムがある朝殺害された。彼が肉食獣と接していたのは演劇部内だけだったということで、部員たちは肉食と草食に別れて、いさかいを始める。
そんななか、アンゴラヒツジのエルスをおかしな目つきで見ていたということで、部員たちの目はハイイロオオカミのレゴシに集まる。
様々な獣の姿をしたキャラクターが青春ドラマさながらの群像劇を繰り広げる、一風変わった動物擬人化マンガ。
斬新な発想に、一般社会の縮図ともとれる巧みなストーリー構成……これがデビュー作とは末恐ろしい才能です!(やはりあのお方の影響もあり!?)
オススメボイス!
■始まりから不穏な空気を漂わせる作品だった。動物擬人化モノでありながら、サスペンス要素が強く優しい世界ではない。登場動物(人物)の内に秘められた本能と衝動は、現実世界の人間の姿を反映させているようでいい。これからももがき続けていってほしい(マキタマキナ/(成年)漫画愛好家)
■まず肉食/草食という分類で獣たちがともに暮らす世界観が、相当しっかりつくられています。そして「獣だから」で許されていいのか、とドキドキヒヤヒヤするほど少年誌限界のギリギリな内容もあるいろんな意味で挑戦的な作品(ササナミ/ブログ「雑食商店街3373番地」管理人兼書店員)
■肉食獣と草食獣が共存する世界で、本能にあらがう意思が美しくほとばしる。猫背のハイイロオオカミの牙を隠したたたずまいは背筋が凍るほどに魅力的です(漫画トロピーク/謎の社会人漫画サークル)
■独特の絵柄、独特の世界観で展開する擬人化学園青春もの。獣の本能と性格との乖離、という軸に、学園ものの閉塞感・箱庭感が彩りを添える魅力的な作品です(山本浩平/まんだらけうめだ店コミックスタッフ)
■高度に進化して文明社会を築いた動物たちの多様な生を描く、「週刊少年チャンピオン」連載の異色作が初単行本化。同誌で(ディズニーの『ズートピア』公開よりも前に!)掲載された読み切りが原型で、肉食動物と草食動物が文化的に共存しながらも、それぞれの本能にゆさぶられる危ういバランスを描く仕立ては同じだが、連載版では舞台をひとつの学園へとコンパクトにまとめ、青春ドラマ方向に舵をきっている。動物の擬人化ではなく、あくまで人型の動物なのがポイントで、我々が必ずしも登場人物の性向を100パーセント理解して共感や同情ができるとはかぎらない描き口がクールでいい(宮本直毅/ライター)
第6位(84ポイント)
『田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-』 田中圭一
『田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-』
田中圭一 小学館
ちばてつや、手塚治虫、赤塚不二夫……と、そうそうたる顔ぶれの総勢23人の有名漫画家の好物料理をご子息・ご息女あるいはゆかりの深い人に語っていただき、インタビュアーとなった田中圭一が描くグルメレポートマンガ。
グルメウェブサイトでの好評連載企画「みんなのごはん」を1冊にまとめたもので、取材相手の絵柄を徹底的にまねる田中圭一のテクニックはもちろん、それぞれの漫画家の食エピソードにほっこりします。
オススメボイス!
■ウェブ連載時も読んでいたが、1冊にまとまるとタッチの変化に驚かされる(侍功夫/映画評誌「Bootleg」代表/映画ライター)
■著名マンガ家の好物を通して描く、家族の物語。田中圭一そっくりさんショーにうっとりしつつ、偉大な親を持った子の人生に思いをはせたり(井口啓子/文化系ライター)
■「ぐるなび」に連載していて掲載のたびにホットエントリー化した話題の作品。漫画家の子どもとゆかりの店で食事をする。多岐にわたる話も最高におもしろいのだが、毎話の憑依マンガが芸術的。印刷の感じやそれぞれの作風が的確に描写されており、舌をまく(すけきょう/ブログ「ポトチャリコミック」管理人)
■ある意味、反則ですが、日本マンガ史のタネ明かしともいえる本作は、笑いあり、涙あり、そして資料的価値もあるというぜいたくなものです(境 真良/国際大学GLOCOM客員研究員・経済産業省国際戦略情報分析官(情報産業))
■漫画家のルポマンガは数あれど、その家族にスポットが当たる作品というのはそうはないのでは? 作中で手塚治虫の机から幻の原稿が出てきた話がありますけど、全国のニュースになってアレ? と(笑)。山本直樹の娘が父の正体を知る話とか、ど根性ガエルの娘ならぬ息子など、見どころは満点です(いけさん/ブログ「いけさんフロムエル」管理人)
■待望の単行本化。グルメスポット案内でもあり、漫画家一家を、食を通してみるレポートとしても興味深く、イタコ漫画家としてのスゴさを楽しむのにも、多重に楽しめます(和智永妙/ライターたまに編集)
「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ!