日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『新黒沢 最強伝説』

『新黒沢 最強伝説』 第10巻
福本伸行 小学館 ￥552+税
（2017年5月30日発売）

アラフィフ・金なし・彼女なしの元土木作業員・現ホームレス黒沢の悶々としたサエない日々を描いた『最強伝説 黒沢』の最新刊。

前巻で合気道愛生流のカリスマ・愛満恋之助がファンのオバサマたちに見せる真剣白羽取りのパフォーマンスの仕込みとなった黒沢たち。
礼金を手にすることなくコケにされた舟木さんの仇を取るため、茶番を拒み、真剣（ガチ）勝負を挑もうとする黒沢だが――。

なんと1冊まるごと“白羽取り”ネタだけ！
さしたる苦悩もカタルシスもないシーンがえんえんと繰り広げられるのは正直ファンとしてもつらいものがあるが、テレビなどのメディアのみならず、加計学園問題や共謀罪強行採決など、現実そのものが茶番であることが露呈した今だからこそ、思考停止＆世の中の流れに同調することなく、不様に抗い続ける黒沢を応援せずにいられない！

煩悩まみれのくせに、ムダに鋭い自意識を持つがゆえにただ生きるだけでは満足できず、悩み、あがいては空まわりしてばかりの己の不様さを日々痛感している人ならば、「黒沢はオレ（私だ）」と共感必至。

なんとか脱落せず、タイトルの“最強”の意味するものを見届けたい。

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69