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『バレエ星』 谷ゆき子 【日刊マンガガイド】

2017/12/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『バレエ星』



『バレエ星』
谷ゆき子 立東舎 ¥1,980+税
(2017年10月20日発売)


谷ゆき子といえば1960年代後半から70年代にかけ、バレエを題材としてタイトルに「星」のつくシリーズを描いて児童学年マンガ誌の世界で大人気を博した漫画家だが、半世紀も経つと知る人ぞ知る“幻の作家”となりつつあった。

そこで昨年、少女マンガ研究の有志が再評価と周知をはかり、特集書籍『超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界』(立東舎)を刊行。
これがおおいに注目を集めたのを足がかりに、今年10月、とうとう「星」シリーズのひとつ『バレエ星』の単行本化が実現したという次第である。
本刊は、1969年に雑誌「小学一年生」で始まり、読者の進級にあわせ「小学四年生」まで連載の場をスライドしながら1971年に完結したストーリーを完全再現収録した豪華復刻本となっている。

主人公は、病気で入院した母親と離れて幼い妹とともに寮生活をおくっていた少女・かすみちゃん。
踊れなくなった母親の願いを引き受けた彼女がバレリーナを目指し、新作バレエ脚本「バレエ星」の完成を進めながら成長を遂げるなかで数々のピンチに陥る展開をひたすら連続するという内容である。

車にひかれて死にかけるかすみちゃん!
バレエの修行で滝に打たれていたら頭上から岩が落ちてくるのに気づかないかすみちゃん!
失明したうえ足を怪我して杖をつきながらグラグラゆれる吊り橋をなんとなく渡ろうとするかすみちゃん!
山で行き倒れたところを助けてくれた野良犬もろとも猟友会に撃ち殺されそうになるかすみちゃん!

……とにかく毎回の「引き」が強いこと強いこと。
どうなっちゃうの!? という興味で次へ次へとページをめくる手が止まらないこと必至だ。
お母さんが何度も病気で死にかけては奇跡的に生き返るため、雑誌のアオリで「ママはこんどこそ ほんとうに たすからないのでしょうか」と言われてしまうのもいい味を出している。

しばしば、「人の生き死にで情に訴えるだけのお涙ちょうだい展開は安易でよくない」と言われることがある。
だが、よくないのはそれが安易で中途半端だからだ。
谷ゆき子の作品は、それらを徹底的に煮詰めた超濃厚さこそを強みにして、活き活きとしたエンターテインメントの極致をひとつの形で体現している。

雑誌掲載時のタイトルを見てほしい。
「かなしいバレエまんが バレエ星」
……この自覚的な表記!
ある回の導入のアオリでは「いつも かわいそうな ことが おこる かすみちゃん! こん月は かなしい ことが おきないように いのってね」と編集部コメントが添えられている。
ここまではっきりド直球で、作品のやるべきことを自覚して創作されたものだからこそ、当時の子どもたちの手に汗にぎらせ、魅了したということだろう。

なお、今回刊行された単行本はそれらのアオリ類がついた状態で本編を収録してあるので、連載時のライブ感をそのまま体験できるかたちになっている。
ありがたいですねー。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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