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『KISS 狂人、空を飛ぶ』 第1巻 新井英樹 【日刊マンガガイド】

2018/02/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『KISS 狂人、空を飛ぶ』



『KISS 狂人、空を飛ぶ』 第1巻 新井英樹
KADOKAWA ¥720+税
(2018年1月12日発売)


『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』の新井英樹の新連載。
舞台は国家の強権的な支配が隅々にまでおよび、戦争の気配が濃厚に漂う世界。
主人公は協調性ゼロ!! 会話能力もゼロ!! 短気おまけに無鉄砲!! で、ひたすら飛ぶことを夢見る少年。彼と不思議な能力を持った茫洋とした少年が出会うことで、物語は想像もつかない場所へと転がり始める――。

新井英樹の読者なら、もはやたいていのことには驚かないだろう。
とはいえ、冒頭100ページ近くが台詞らしい台詞や説明もないまま、少年の日常描写に被せて
「この世はすべて虚無 なんの意味もない ってことでよろしいでしょうか?」
といったフレーズがラップのように吐き綴られてゆく本作には、やはり戸惑いと興奮を禁じえない。

物語の設定自体は現在の日本を照射したものであり、そこに様々な「意味」を読み解くことは可能だ。
「空を飛ぶ」ことは、他人から見れば非現実的極まりない「狂気」でも、当人にとっては唯一信じられる「リアル」であり、そのためにもがき続ける少年の姿は、社会的な規範や善悪を超越した「リアル」を愛や性や暴力というかたちで追い求めてきた新井英樹ワールドの主人公たちに自ずと連なる。

泥臭く生々しい描写もあいかわらずだが、それこそは昨今流行のマンガにはないものであり、こんなものは受けつけないという人も、誌面の上でグツグツとたぎる、むせかえるような熱く濃ゆい熱気にはただただ圧倒されるだろう。
そこに『なぎさにて』が打ち切りとなった著者の「世界」への怒りや憤りのようなものを感じてしまうのは、筆者の思い込みだろうか?

「利口はいつも冷めた顔で人間たちが戦うことを『世界はね』と説きます バカはいつも元気に我が穴ぐらで世界をふんぞり返って誇ります 双方ただあり余る時を勝ち負け生き死にの理屈で掘って埋め掘って埋め… でもキチガイは こんな感じ 誰か何かの勝ち負け生き死にもバカと利口の世界や存在すらもまるで幻!! ぜんぶ幻!!」

これを狂人の戯言とスルーするか、聖人の叫ぶ真実と受け止めるか。
お手軽な娯楽を求める人にはオススメしない。
危険を承知で、見たことのない風景を見たいという人は必読!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツ・リージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。『音楽マンガガイドブック』(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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