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『押入れの少年』 第3巻 高橋葉介(作)みもり(画)【日刊マンガガイド】

2018/03/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『押入れの少年』



『押入れの少年』 第3巻
高橋葉介(作)みもり(画)
秋田書店 ¥454+税
(2017年12月15日発売)


父母が行方不明になったので祖母の家へ身を寄せた女子高生・神野みこと。
ところがその家は、この世とあの世の境目にあるとんでもない心霊スポットだった。
原因は、家の奥にある押入れである。
ふすまを開いた先にある暗闇は、妖怪たちがどんちゃん騒ぎをくりひろげる森や、亡者が成仏するための霊道など、いろんなパラレルワールドへつながるホラー版“どこでもドア”状態。
みことは自分にしか見えない謎の少年・サトルを相棒に、異空間に迷いこんだ人間を助けだしたり、凶悪な妖怪を押入れに放りこんで封印したりと、忙しい日々を送ることになる……。

というホラーマンガ『押入れの少年』が完結を迎えた。
2012年にプロトタイプの読み切りが「プリンセスGOLD」で掲載されたのち「月刊プリンセス」で2017年まで連載。
同年12月に刊行された第3巻をもって、単行本でもフィナーレとなった。

全22話をエピソードごとに見ると、オバケ屋敷に忍びこんだ人間が心霊現象に出くわして「ギャーッ」というシンプルな回はもちろんあるが、後半にいくほど人間の心のひだをすくいとる話が印象に残る。

特に必見は、今巻収録の第17話「押入れの森の教室」だ。
ネグレクトといじめを受けてふさぎこんでいる少年が自分の家の押入れにこもっていると、押入れの空間同士をわたってみことが出現。
少年は妖怪の森へ案内され、同じような境遇で押入れを通して集められた子どもたちと青空教室で楽しいひとときを過ごし、自分の居場所を選ぶ余裕が生まれるというお話だ。
非現実の恐怖やパニックの原因として描かれていた異空間が、逆に暴力的な現実に傷つけられた幼い心をいやす避難所として機能する逆転があざやかで、ホラー分野の奥深さがとてもよくあらわれている。

そうして様々な事件解決を積み重ねながら、ただの女子高生だったみことは超自然のトラブルに慣れていき、ひょうひょうと対応するプロフェッショナルの風格を帯びていく。
その成長が彼女に異空間の守護者という重い役割を受け入れさせ、ついには普通の人間としての生き方と決別する覚悟にまでつながる最終巻の展開は、かっこよくもあり、せつなくもあり……。
本作は、ひとりのスーパーヒロインが生まれるまでのエピソードゼロだったという見方もできるだろう。

怪奇ジャンルの大御所・高橋葉介を原作につけ、キッズホラー小説『地獄堂霊界通信』のコミカライズで知られるみもりが作画を担ったという座組から期待されるところを裏切らない秀作でありました。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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