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『学校へ行けない僕と9人の先生』 棚園正一 【日刊マンガガイド】

2015/03/17


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『学校へ行けない僕と9人の先生』
棚園正一 双葉社 \741+税
(2015年2月27日発売)


小学校から中学校を通じて不登校だった作者の、実体験に基づく物語。
学校へ行けない日々と、棚園少年に影響を与えた「9人の先生」との出会いを描く。

小学校1年生のときに担任の教員と「不幸な出会い」をした棚園少年は、その後も担任の教員、医師、家庭教師、不登校児童の学習塾のスタッフなど、数々の「先生」と関わる。
そして棚園少年の出会った9人目の先生こそが、『ドラゴンボール』の作者・鳥山明先生であった。その出会いは、少年の希望になる。

思い返してみると、われわれの人生には数多くの「先生」との出会いがある。そして、そのどれもが、必ずしも幸福な出会いになるとは限らない。
先生と生徒といっても人間同士だから当然なのだが、それでも子どもにとっては、その「出会い」が一生を左右する可能性がある。なにしろ子供にとっては、学校と家庭だけが世界のすべてだから、学校に居場所を見つけられなければ、家から足を踏み出せなくなってしまうものである。
息苦しさを感じながらも、どうにか適応しようとして「フツーでありたい」と願う棚園少年の姿には、胸が締めつけられる思いだ。

物事のたいへんさや苦痛は、本人でなければわからない。端から見れば些細なことのように思えても、当人にとっては深刻であったりする。
なによりも周囲に「わかってもらえないこと」が辛い。そして家族や友人や先生に対する「いたたまれなさ」が、ますます少年の心をさいなむ。
棚園少年は、けっして「特別な子供」ではない。きっかけと不幸な出会いが重なれば、棚園少年が陥った境遇は、だれの身にも起こりうることなのだ。

中学生になった棚園少年が鳥山明原画展を訪れるエピソードでは、それまで伏し目がちだった棚園少年の視線に注目してほしい。
その視線を追いかけて読み進めると、世界が開けていく様子が手に取るようにわかるし、作者が抱いた驚きや感動を読者も共有できるのだ。そしてその清新な昂ぶりは、われわれが普段、マンガのページをめくる喜びにも似る。

また、世界と自分を隔てる「窓」を象徴的に描くあたりにも、作者の「マンガ巧者」ぶりがうかがえる。
その物語る力のたしかさに、テーマがどれほど深刻であっても、読むときめきを禁じえない。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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