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『古都こと -チヒロのこと-』第3巻 今井大輔 【日刊マンガガイド】

2016/06/19


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『古都こと―チヒロのこと―』第3巻


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『古都こと―チヒロのこと―』第3巻
今井大輔 双葉社 ¥600+税
(2016年5月25日発売)


『古都こと』は、京都を舞台に、大学入学まで恋愛とは無縁だったチヒロと、学力は高いが恋愛偏差値は低いユキチとの不器用な恋愛(登場人物の言葉を借りれば「何お前ら中学生か」という恋愛)を描いた作品である。

この作品が画期的なのは、同じ作者(今井大輔)がひとつの物語を男女各々の視点で描き、出版社の異なる別々の雑誌に同時連載していた点だろう。

本作『古都こと-チヒロのこと-』は女性視点の物語として「漫画アクション」(双葉社)に連載され、一方男性視点の『古都こと-ユキチのこと-』は「ヤングチャンピオン」(秋田書店)に連載されていたのだ。そして、この5月に最終巻となる本作と『古都こと-ユキチのこと-』の第3巻が同時刊行された。

『古都こと -チヒロのこと-』は、こんな風に始まる。
京都の五条の窯元の娘・門脇チヒロは、大事にしていた紅葉模様が描かれた手鏡を祖母に骨董市で売られてしまう。手鏡は、チヒロと同年代の男性が「『運命の人』にあげる」と買っていったという。
翌日チヒロは、高校時代の先輩カホに誘われるまま、洛北大学のキャンパスで写真部の部員勧誘のチラシを配ることになった。と、突然チヒロに男子学生がぶつかった。
その時、学生が落としたのは、チヒロの手鏡だった!
手鏡を拾って、差しだすチヒロに対して、男子学生は「(手鏡は)あなたにあげます」と告げる。
この男子学生が、もうひとりの主人公・堀川ユキチなのである。

チヒロとしては、手鏡を手渡されて、自分こそがユキチにとっての「運命の人」なのかと盛りあがる。だが、『古都こと-ユキチのこと-』を読むと、ユキチがチヒロに手鏡を渡した本当の気持ちがわかり、チヒロにとっては喜べる状況ではないと理解できる。
登場人物は自分のまわりのことしか見えていないが、読者は2人の行動の全貌が俯瞰できる。
これこそがこの企画の狙いであり、読者のたのしみどころなのだ。

ところで、気持ちの通じあっている男女が、様々な障害を乗り越えて結ばれるというのが恋愛ものの常道だが、チヒロとユキチはそうではない。縁もゆかりもなかった2人が、偶然と誤解の積み重ね(と、周囲の人間のあと押し)により、徐々に心を通わせていくのである。
そういう意味で『古都こと』では「脇役」たちが重要な役割を果たしている。
チヒロが変わるきっかけになった先輩のカホ、恋愛大好き少女のハルカ、寡黙なソースケという写真部の同級生陣、そしてユキチをめぐって恋の鞘当てを仕掛けてくる小泉ヒナタや、ユキチの“友人”のモンタといった面々。こうしたバイプレイヤーたちの言動に背中を押されながら、チヒロはユキチへの恋愛を動かしていくのである(それは、ユキチも同様で、自分の所属するワンゲル部の部員らによるサポートがあるのだ)。

今回のような出版社の枠を超えてのコラボレーションは、慣例がないだけに、著者だけでなく担当編集者など多くの関係者の努力があって実現したものだと思う。
これを機会に、出版社の枠を超えた企画が増えてくることを期待したい。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)で国内本格ミステリ座談会とミステリコミックの年間総括記事等を担当。また現在発売中の、「ミステリマガジン」5月号(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。

単行本情報

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