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『星野、目をつぶって』 第1巻 永椎晃平 【日刊マンガガイド】

2016/08/08


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『星野、目をつぶって』


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『星野、目をつぶって』 第1巻
永椎晃平 講談社 ¥429+税
(2016年7月15日発売)


人は生きていく時に、「装甲」が必要になることがある。
それは服装かもしれない。知識かもしれない。身体能力かもしれない。
なんらかの心身を守るすべをだれしも探す時期がある。
その装甲としての「メイク」を描いたのがこのマンガだ。

クラスのなかでどのグループにも所属せず、1日中机で寝たふりをしている小早川。
彼は人と話すのは得意ではない。群れるやつらをバカだと思っている。
クラスの人気者のギャル・星野海咲(ほしの・みさき)に「そんなんで何か楽しいことあんの? 暗ッ!」と言われ、怒りに震える。
ところが彼女、化粧がとれてすっぴんになると、まるで別人の地味な顔。
友だちがすっぴんの彼女を見ても気づかないほど。

星野はギャルメイクと派手な髪型とオシャレをすることで、みんなと仲よくする勇気を得ていた。
この格好だからみんなが友だちになってくれると思っている。
だが本人はメイクが下手くそ。幼なじみの先生にしてもらっている。
そこで先生は美術部の小早川に、星野にメイクを施してほしい、といいだした。

ベースは明るいラブコメディ。
しかし高校時代のスクールカーストへの作者の考え方が、がっちりと練りこまれている。
クラスで居場所を失ったり、友だちができなかったりするのは、高校時代においては死活問題だ。
小早川がアゲアゲなクラスメイトといっしょにいて、テンションが上がるわけもなく、ノリが悪いと罵られる様はあまりにも生々しい。
第1巻後半では小早川同様グループに所属できなかった少女・松方への激しいいじめが描かれる。ふんわり明るい作風でまとめてはいるものの、登場する少年少女の悩みはあまりにも重たい。

星野は根が優しく明るく、正義感が強い。
メイクをすることではっきりものいいができるようになるシーンは、まるで戦隊ヒーローの変身のようだ。

もちろん息苦しい高校生活のなかで、ありのままの自分を受け入れてもらえればそれにこしたことはないだろう。だが、「メイク」という自分を変える力を頼ったっていいはずだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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