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【日刊マンガガイド】『ハレルヤオーバードライブ!』第12巻 高田康太郎

2014/08/23


HALLELUJAHoverdrive_s12

『ハレルヤオーバードライブ!』第12巻
高田康太郎 小学館 \457+税
(2014年8月12日発売)


一目惚れした先輩は、背の小さなドラマー・ハルさん。彼女に認められたくて必死にギターの練習をしていた高校1年生の小雨は、ハルが重い哀しみを抱えているのを知る。それは自分たちの大切な「希望」という名前のひとつの曲を、だいなしにされたこと。
小雨たち「金属理化学研究部(という名前の軽音楽部。通称メタりか)」はバンド活動を通じて、「希望」を取り戻し、さらに次のステップに進むべく、自分たちの音楽に磨きをかけ始める。

青春の暴走と、恋愛と、バンド活動でしか得られない音楽の楽しさをみっちり詰め込んだ作品だ。
音楽で対決するとか、闇雲に感情で唄うとか。高校生たちのバンド活動はとてつもなく青臭い。
その青臭い音を直球で描いているため、読後感は雨の後の晴天のようにとても爽やかだ。

作中には問題になっている曲「希望」や、小雨たちが作った新曲「ハレルヤ」をはじめ、バラードからヘヴィメタルまで様々な曲が登場する。
ライブシーンの多いこのマンガ。歌詞やメロディはいっさい描かれない。表現しているのは、その場に伝わる空気の振動・音圧と、場を揺さぶる高揚感だ。ハルたちのバンド「メタルリカちゃん」はヘヴィメタルバンドなので、スピーカーやバスドラムから襲ってくる空気の振動が紙面からビリビリ伝わってくる。一方小雨たち「ティアドライブ」の曲は、雨が静かに降るような表現を使って、エモーショナルな魅力を伝えている。

音楽をマンガにするのはたいへんむずかしい。
それを、歯止めの効かない高校生の感情とリンクさせ、マンガの絵の力で爆発させてくれる快作だ。
12巻では、アホだった小雨も大きく成長し、ライバルだったバンド・リリーパスカルとの距離感をつかみ始めたり、中学生バンドと出会い先輩になったりと、大きな転換点を迎える巻になっている。
彼らが前進する度に、新しい「音」の描写が入ってくるのが、楽しみのひとつだ。

キャラたちが恋愛沙汰でバンドが壊れるのを恐れて、ぎりぎりで踏みとどまっている様子も魅力のひとつ。恋愛と音楽、どちらかに偏りすぎることなく、悩みごとの面倒臭さをうまく音楽のエネルギーに昇華していく。
でもほんと、バンド内恋愛はほどほどになー。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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