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いくえみ綾『あなたのことはそれほど』インタビュー  私ハマるとしつこいよ――ズルい女とわるい男のリアルでドロドロなW不倫劇

2015/06/01


初恋の相手だった有島と街で偶然再会した美都。思いこみの激しい美都は運命を感じ、夫がいることは告げずに一夜をともにする。一方の有島にも出産したばかりの妻がいたが、2人は秘密の逢瀬を重ね続ける。
割り切った不倫関係を楽しんでいた美都と有島だったが、やがて微妙な温度差が生じ始め、美都の夫・涼太、有島の妻・麗華を巻きこんだドロドロの四角関係へと突入して……。

「W不倫」というかぎりなくメロドラマな題材を、当事者の男女だけでなく、その家族や友人の複雑な心情までもリアルに描き、深みのある人間ドラマへ仕立てた『あなたのことはそれほど』。
美しいタッチとは反対に出口なしのドロドロの不倫劇にハマる読者が続出し、「このマンガがすごい! 2015」のオンナ編でも15位にランクインするなど、今、大注目の本作。いくえみ綾先生のリアルで繊細な心理描写と圧倒的な物語力で、「不倫」というキーワードだけでは語れない、「大人の男女の恋愛」の“すごみ”が描かれる。インタビュー前編では、作品の誕生とヒトクセあるのにリアルな登場人物について、いくえみ先生にお話をおうかがいしました。

いくえみ綾

いくえみ綾(りょう)

北海道出身。1979年、14歳の時に「別冊マーガレット」(集英社)にて『マギー』で漫画家デビュー。代表作に『潔く柔く』『バラ色の明日』など。大の奥田民生ファン、愛猫家としても知られる。現在、「FEEL YOUNG」(祥伝社)にて『あなたのことはそれほど』『そろえてちょうだい?』を、「Cookie」(集英社)にて『太陽が見ている(かもしれないから)』を、「Cocohana」(集英社)にて『G線上のあなたと私』を、「バーズ」(幻冬舎)にて『私・空・あなた・私』を、「月刊!スピリッツ」(小学館)にて『おやすみカラスまた来てね。』を連載中。

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いろんなことが描ける「W不倫」という設定

――『あなたのことはそれほど』は、先生のなかでは珍しい「不倫モノ」であり、恋愛にまつわるさまざまな感情が描かれているとはいえ、ドロドロ度が高い大人な作品となっています。それは掲載誌「FEEL YOUNG」(祥伝社)[注1]の読者層を意識されてのことなのでしょうか?

いくえみ 「FEEL YOUNG」という読者層はある程度は意識しましたが、もともとあまり計画を立てないでネームを始めてしまうタイプなので、最初の1ページを描いた時はほとんどなにも考えてませんでした。流れに任せて進めていって、ああなった感じですね。

――今回「不倫」という設定を選ばれたのはなぜなのでしょう。

有島に子どもが生まれたと聞いてもひるまず不倫関係の継続を提案する美都。なにが「大丈夫」なんだ!?

有島に子どもが生まれたと聞いてもひるまず不倫関係の継続を提案する美都。なにが「大丈夫」なんだ!?

いくえみ 不倫という設定なら、だれにでもありえる「二面性」みたいなのを表現できるかな? ……というのは、今聞かれて初めて考えました。あまり考えながら描いてないんです。個人的には、不倫はだめとかいいとか、やってみたいとかやりたくないとか、別になにも言えない感じです。マンガでこう描いてるからこう思ってるとはかぎらないし、現実のほうが気持ち悪い気がします。マンガのなかの物語と現実は違いますよね。私の描いてるのはただの物語なので。

――今回は「W不倫」ということもあり、当事者である美都と有島2人の関係を描こうとすると、自然とそれぞれのパートナーを含めての四角関係を描くことになります。先生が描きたかったのは、むしろその部分なのかもと感じたのですが。

いくえみ それを描きたい! とは思ってませんでしたが、いざ描き始めると、それぞれの背景があって、いろんなことが描けておもしろいなあとは思いました。

――美都は三十路の女性にしては夢見がちな部分があって、友だちや自分の世界よりは彼氏がすべて! みたいな、やや恋愛依存症的なところもあります。若い女性だと、このテのタイプは少なくない気もするのですが、先生自身にも共感するところはありますか? それとも、こういう女子っているよね~という客観の産物なのでしょうか?

中学生の時に大好きだった有島との再会に「運命」を感じはしゃぎまくる美都。29歳、しかも既婚者でこのはしゃぎっぷりはちょっとイタイ……。

中学生の時に大好きだった有島との再会に「運命」を感じはしゃぎまくる美都。29歳、しかも既婚者でこのはしゃぎっぷりはちょっと……!?

いくえみ まさに客観性ですね。というか、いつもなにを描いても客観視してると思います。私にはまったく似ていませんね。

――「時々自分が2人いるんじゃないかと思う」「どっちもおいしいとこだけ取りたがるから結局おなじ」という美都は、自分のズルさを承知で突っ走ってるわけですが、一方で「いつか罰があたる」とも思っています。それは世間的モラルというより、自分のズルさに対する罪悪感なのでしょうか…?

いくえみ そうですね。モラルよりなにより、本能で突っ走ってしまったことを、また本能がだめだと知っているのだと思います。

「2番目に好きな人」を夫にし、1番好きな人と不倫……。それってちょっと共感できたり、ふと、自分の相手も……と考えてしまったり……。

「2番目に好きな人」を夫にし、1番好きな人と不倫……。それってちょっと共感できたり、ふと、自分の相手も……と考えてしまったり……。

――有島は俗にいう「ズルい男」ですが、妻の麗華に対しては優しい夫であり、麗華とのなれそめや結婚に至る過程を知ると、憎めなくなります。悔しいけど、モテるだろうなあとも……。

いくえみ まさに「憎めなくなる」というのが、有島の人物像だと思います。憎める人もたくさんいるでしょうけど。有島はわりと普通の男だと思います。ダメなところもいいところもある、普通な男。浮気自体がNGな人にとっては、ありえないでしょうけど。モテるんじゃなかろうかと思って描いています。

高校時代、卒業間際に麗華に携帯番号を聞く有島。チャラい有島の本気照れがかわいい! その後、結婚までいくんだから本気なんだよなぁ。なのに不倫するんだ……。

高校時代、卒業間際に麗華に携帯番号を聞く有島。チャラい有島の本気照れがかわいい! その後、結婚までいくんだから本気なんだよなぁ。なのに不倫するんだ……。

――有島は、育ちがいいがゆえに外面がよくて、それが彼のいい加減さやズルさにつながっている気がします。だからこそ、彼は自分とはあらゆる面で対照的な麗華を選んだのかなと。有島も麗華とつきあいながら「なぜだ?」と自問自答するシーンがありますが……。

いくえみ 男女の組みあわせを決める時にほとんど考えてないので、自然のなりゆきでこういうカップリングになったとしか言えないですね。たぶん、カップリングとしてのおもしろさで私が選んで、おもしろがって描いたんです。


  • 注1「FEEL YOUNG」 祥伝社から発行されている女性向けの月刊マンガ雑誌。創刊は1989年。過去の連載作品に『ハッピー・マニア』(安野モヨコ)、『ヘルタースケルター』(岡崎京子)、『うさぎドロップ』(宇仁田ゆみ)などがある。

単行本情報

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