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【インタビュー】大人が読んで共感できるガンダムが作りたかった 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男【前編】

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2014/06/20


『MOONLIGHT MILE』[注1]でリアルな宇宙開発を描いていた現代ハードSFの旗手・太田垣康男がガンダムを描く! SFファンとガンダムファンが騒然となったのが『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(以下『サンダーボルト』)だ。連載開始までの経緯、SFやガンダムへの思い入れを聞くべく、作者・太田垣康男先生を直撃した!

中編はコチラ!
【インタビュー】甲子園に行くように戦争に行く若い兵士を大人の目で見るリアル。 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』太田垣康男【中編】
後編はコチラ!
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太田垣康男

1967年生まれ。

代表作は『MOONLIGHT MILE』(小学館)『FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE』(スクウェア・エニックス)。

近未来の宇宙開発競争を描いた『MOONLIGHT MILE』は2007年にTVアニメ化される。

現在は「ビッグコミックスペリオール」(小学館)にて『機動戦士ガンダム サンダーボルト』を連載中。

連載開始までの経緯

――太田垣先生は『機動戦士ガンダム』[注2](以下『ガンダム』)の直撃世代ですか?

太田垣 本放送は中学1年生のときです。夕方の5時台に放送されていたんですが、部活があって見られなかったんですよね。だから本放送は見てません。そのあとブームになって、翌年に再放送されたときに見ました。

『ガンダム』への熱い想いを語りまくる太田垣康男先生。

『ガンダム』への想いを語る太田垣康男先生。

――今回『サンダーボルト』を描くにあたり、どのような経緯でお話がきたのでしょうか?

太田垣 もともとは『機動戦士ガンダムAGE』[注3]というアニメ作品の放映が開始するときに、小学館の各雑誌で応援キャンペーンのような企画をやろう、という話だったんです。そこで編集部から「ガンダム、やってみませんか?」とお誘いがきたんです。

担当 編集部では「太田垣さんにガンダムを頼んでも怒られないかな?」と戦々恐々だったみたいです(笑)。

太田垣 (笑)。ただ、僕は連載の前の年にtwitter上でモビルスーツ(以下MS)[注4]のイラストをアップ[注5]してましたからね。

担当 私は『MOONLIGHT MILE』との兼ね合いがクリアされれば絶対に描いてくれるだろうとは思ってました。

太田垣 いやもう、ふたつ返事で「やります!」と。

――では、はじめは企画モノの読切作品をお願いします、という話だったんですか?

太田垣 そうです、こんなに長く続くとは思っていませんでした。

――『ガンダム』シリーズは現在に至るまで数多くあります。そのなかで最初の『ガンダム』を題材に選んだのは?

太田垣 やっぱり、自分が見てたのが『ガンダム』と劇場版三部作[注6]でしたからね。最初のテレビシリーズは、今見ると古く感じるところもありますが、登場人物の感情の流れはものすごく自然なんです。だからいつ見ても共感できる。ハモンがアムロにちょっと優しくしただけで、ランバ・ラルが嫉妬というか少しイラッとくる(第19話「ランバ・ラル特攻!」)とか、アムロがララァに「きれいな目をしているのね」と言われて恋に落ちちゃう(第34話「宿命の出会い」)とか、些細な感情の起伏が本当にリアルですよね。アムロの両親との距離感とか……。

――今回『サンダーボルト』を描くにあたり、『ガンダム』は見返しました?

太田垣 じつはスタッフに『ガンダム』を知っている人がいなかったんです。

――おおお、ジェネレーションギャップだ(笑)。

太田垣 さすがにまったく知らないと、僕が何をやろうとしているのか伝わらないんじゃないかと思いまして、「じゃあみんなで見よう」となったんですね。全43話は長いので劇場版三部作を……と。そこでスタッフがレンタル店から借りてきたのが『特別版』[注7]

――あ、吹き替えのキャストが違うバージョンですね。

太田垣 スタッフはみんな楽しんで見ていましたよ。僕は昔の思い出があるから、さすがに違和感がありましたけど(笑)。

――読切作品を想定していたときは、今と同様のストーリーだったんですか?

担当 初期構想では全然違う話でしたよ。

太田垣 最初は主人公がもっとオッサンでした。

担当 それはそれで渋い魅力がありましたけどね。打ち合わせの後日、太田垣先生からプロットが送られてきたときに「わ、打ち合わせと全然違う話だ!」「すげえ、サンダーボルト宙域とか出てきた!」って感じでした(笑)。

一年戦争初期の戦闘で損傷し、帯電したコロニーの残骸が放電を繰り返す「サンダーボルト宙域」。

一年戦争初期の戦闘で損傷し、帯電したコロニーの残骸が放電を繰り返す「サンダーボルト宙域」。

太田垣 最初のうちは『MOONLIGHT MILE』を引きずってました。主人公の猿渡吾郎が中高年だったので、自分はそっちが得意だと思い込んでいたんです。だから『サンダーボルト』のときも、オジさんを主人公にして描こうとしていました。ただ、それだと自分のなかで新しさを感じなかったんですね。それで「もうオッサンは描き飽きたから美形を描こう!」と(笑)。女性ファンがつくような美形を描こうと思って、本作の主人公(ダリルとイオ)が生まれたんです。残念ながら女性ファンは、まだあまりついてませんが……(笑)。

おしゃべりなイオと寡黙なダリル。正反対な二人だが、それぞれ戦争という狂気と向かい合っている。

おしゃべりなイオと寡黙なダリル。正反対な二人だが、それぞれ戦争という狂気と向かい合っている。

――オッサンではありませんが、ダリルとイオは、歴代のガンダムシリーズの主人公よりは年長で、少年兵ではありません。そのあたりは意識していたんですか?

太田垣 スタンダードな『ガンダム』シリーズとは違いを出したいと思っていました。ですから、あえて少年兵は選ばなかったんです。掲載誌の「ビッグコミックスペリオール」は大人が読む雑誌なので、大人が読んで共感できる年齢まで引き上げよう、と。

――「スペリオール」の読者[注8]って、どれくらいの年齢層ですか?

担当 30代から40代前半くらいですね。

太田垣 歴代ガンダムシリーズの主役くらいの年齢の子どもがいてもおかしくない、その親の世代ですからね。自分の子どもだって理解するのは難しいのに、マンガのなかの15歳はなかなか共感してもらえないだろうなぁ、と思ったんです。

――では物語の時代背景を、一年戦争[注9]の末期に設定した理由をお聞かせください。

太田垣 マンガのなかにRX-78[注10]を登場させたいから、というのが一番の理由です。戦争初期はザクしかいませんからね。

一年戦争後期であれば、RX-78シリーズも登場させられる! なんてガチな設定まで作られれいるのがスゴい!

一年戦争後期であれば、RX-78シリーズも登場させられる! なんてガチな設定まで作られれいるのがスゴい!

――アムロがガンダムに乗るのが9月。そこからテレビシリーズが始まります。

太田垣 ア・バオア・クーで終戦を迎える(アニメ最終話)のが12月31日なので、ガンダムを登場させようと思ったら、時期が限られてしまうんです。

――それにしても『サンダーボルト』の舞台となるサイド4[注11]は、それまで他の『ガンダム』シリーズで手つかずの場所でした。よくこの舞台をチョイスしたなぁ、と。

太田垣 いやぁ、逆ですよ。こういうことを描きたいな、と思って調べると、もうすでにそこは使われていたりするんですよね。ただ、自分がやっている『サンダーボルト』は、ガンダムの正史を追いかけるものではないという意識でやっています。

――と言いますと?

太田垣 たとえて言うなら『バットマン』[注12]でしょうか。もともとはアメコミがあって、テレビシリーズがあって、そしていろいろな監督さんが自分のイマジネーションで映画を作ってきました。

――いわゆるリブート[注13]作品ですね。本編の外伝とか、リメイクではなく。最近の『スタートレック』や『アメイジング・スパイダーマン』もその流れにあります。

太田垣 『ガンダム』という題材を、自分の視点を通して再構成したかったんですね。ハリウッドでのリブートという手法を、自分でも使ってみようと思ったんです。


  • 注1 太田垣先生が2000年から「ビッグコミックスペリオール」(小学館)にて連載しているSF作品。近未来の宇宙開発競争時代を描く。現在は『サンダーボルト』執筆のため休載中。
  • 注2 サンライズ(当時日本サンライズ)制作のアニメ。『ガンダム』シリーズの第1作。放送終了後にバンダイから発売されたプラモデルが爆発的なブームとなり、劇場版や続編が作られるようになる。
  • 注3 サンライズ制作のアニメ。テレビアニメの『ガンダム』シリーズとしては、通算14作品目。2011年10月から2012年9月にかけて放映された。ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの開発や『レイトン教授』『イナズマイレブン』シリーズ、『妖怪ウォッチ』などで有名な株式会社レベルファイブが制作に携わった。
  • 注4 モビルスーツ (MOBILE SUIT)。『ガンダム』シリーズにおける、人型ロボット兵器の総称。従来の巨大ロボットアニメが用いていた「ロボット」と区別する意味合いで用いられた用語。ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』に出てくるパワードスーツをモデルにしているとも言われる。小説の挿絵でパワードスーツを描いたのはスタジオぬえ。のち1988年、『宇宙の戦士』はサンライズとバンダイビジュアルの制作でOVA化された。
  • 注5 2010年12月、twitter上でさまざまなマンガ家がガンダム関連イラストをアップする「ガンダム祭り」が発生。太田垣先生はガンダムやザク、ドムなどさまざまなMSのイラストをアップした。
  • 注6 松竹系にて公開された映画作品。『ガンダム』のテレビシリーズ全43話を再編集し、新作カットを追加している。第1作『機動戦士ガンダム』(1981年3月公開)第2作『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』(1981年7月公開)、第3作『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(1982年3月公開)の三部作。
  • 注7 2000年に発売された劇場版三部作のDVD版。アフレコや効果音、BGMが一部変更されている。
  • 注8 1987年7月に創刊された当初は、年齢層の高い「ビッグコミック」「ビッグコミックオリジナル」と、青年誌「ビッグコミックスピリッツ」の中間の読者、つまり「主として若手のサラリーマンを対象にしたコミック誌」(プレジデント社『ビッグコミック創刊物語』滝田誠一郎)をターゲットにしていた。現在においても、他の青年誌よりはもう少し上の世代を対象としているといわれる。
  • 注9 『ガンダム』の劇中において、地球連邦軍とジオン公国軍が戦った戦争。宇宙世紀0079年1月3日に開戦し、0080年1月1日に終戦協定が締結されたことにより、「1年戦争」と呼ばれている。テレビアニメ全43話では、0079年9月に地球連邦軍の強襲巡洋艦ホワイトベースがサイド7に入港するところから、0079年12月31日のア・バオア・クー(ジオン公国軍の宇宙要塞)での攻防戦までが描かれる。
  • 注10 ガンダムの型式番号。通称プロトタイプガンダム、RX-78-2は、アニメでアムロ・レイが搭乗する機体で、以後地球連邦のエースモビルスーツには、「ガンダム」の名が冠されることとなる。
  • 注11 『ガンダム』シリーズに登場する宇宙の宙域。サイド1からサイド8まで設定されており、各サイドは複数のコロニーから形成されている。アニメ『機動戦士ガンダム』はサイド7(ノア)からスタートする。サイド3(ムンゾ)にはジオン公国、サイド6(リーア)は中立コロニー……など、歴代の『ガンダム』シリーズを通じて、各サイドにさまざまな設定が作られていった。『サンダーボルト』の舞台となるサイド4(ムーア)は、「一年戦争の序盤に壊滅的な打撃を受けた」とされていたため、これまでの『ガンダム』シリーズではほとんどクローズアップされることがなかった。
  • 注12 アメリカのDCコミックが刊行する人気コミック・シリーズ。原作者はボブ・ケイン(かつてはビル・フィンガーとの共著だったが、権利関係の問題で、現在のクレジットはケインのみ)。 最初の原作コミックは1939年発行。実写テレビシリーズ(邦題は『怪鳥人間バットマン』)は1966~1968年に放映。それにあわせて1968年には映画も公開。 70年代には人気は衰えていたが、ティム・バートン監督のリメイク映画『バットマン』(1989年)で再ブレイク。ここでイメージが刷新され、その続編が3本制作された。 2005年にクリストファー・ノーラン監督の『バットマン・ビギンズ』からシリーズが再スタートされ、『ダークナイト』『ダークナイト・ライジング』が制作された。
  • 注13 連作物のシリーズ作品において、従来のシリーズ作品とは別に、最初からシリーズを作り直すこと。「リメイク」がオリジナルの“作り直し”であるのに対し、「リブート」は設定や物語そのものにも手が加えられる。代表例としては『バットマン・ビギンズ』、『スター・トレック』(2009年)、『アメイジング・スパイダーマン』など。

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