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予約殺到! 魔夜峰央『翔んで埼玉』単行本発売記念インタビュー 戦慄の埼玉disマンガ誕生の秘密とは?

2015/12/22


「生まれも育ちも埼玉だなんて、おお、おぞましい」――。

まるで親の仇のように埼玉&埼玉県民をこれでもかとネタにした、『パタリロ!』でおなじみ魔夜峰央先生の連作『翔んで埼玉』。
80年代に執筆され、長らくファンの間で伝説の迷作(?)として語り継がれてきた本作、そのあまりに過激な「埼玉dis」が、近年、Twitterを中心にネット上で大きな話題に。結果、なんとテレビ番組でも取り上げられ、お茶の間に「埼玉から東京へ行くには手形が必要」などの言葉が流れることに……!

今回、宝島社からの単行本リリースが決定するや、予約殺到! 十分な数を刷るため、発売日が延期という予測不能の事態まで巻き起こりました。
埼玉県民もそうでない人も必読の、超々話題作12月24日リリースを記念し、作者の魔夜先生に、現在の心境を直撃しました!

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『翔んで埼玉』
魔夜峰央 宝島社 ¥700+税
(2015年12月24日発売)

著者:魔夜峰央

1953年、新潟県出身。横浜在住。

1973年「デラックスマーガレット」(集英社)でデビュー。
1978年、「花とゆめ」(白泉社)にて代表作『パタリロ!』の連載を開始。『パタリロ西遊記!』などのスピンオフ作品を生む大ヒット作となる。1982年、フジテレビ系列で『パタリロ!』がアニメーション化。

現在、「別冊花とゆめ」「MELODY」(ともに白泉社)にて『パタリロ!』を連載中。また、「まんがライフ」(竹書房)では年に1回、『眠らないイヴ』を掲載している。

「肌で感じとった県民性」から怪作が爆誕!

――「30年も前に、こんなにすごいマンガがあったのか!?」とネットでじわじわ話題になり、復刊単行本の発売が決まるや予約殺到。先生ご自身は、今どんなお気持ちですか?

埼玉県民が東京へ行くには手形が必要……冒頭からとにかくすごい世界観、いや埼玉観!

埼玉県民が東京へ行くには手形が必要……冒頭からとにかくすごい世界観、いや埼玉観!

魔夜 「なぜ今?」という感じですね。うれしい交通事故です。当時はまったく反響もなかったので不思議としか言いようがない。

――むしろ早すぎた作品なのかもしれないですね。当時は『パタリロ!』[注1]大ヒットの陰に隠れてしまったのかもしれませんが、今読んでもまったく古さを感じません。これは魔夜先生の作品すべてにいえることですが。

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魔夜 新潟から所沢(埼玉県)に引っ越してきて……埼玉に住んだから描けた作品ですね。

――単行本あとがきにも書かれていましたが、改めて引っ越し先に所沢を選んだ理由を聞かせていただければ。

魔夜 当時の「花とゆめ」(『パタリロ!』『翔んで埼玉』掲載誌)の編集長がすすめてくれたからです。西武線沿線はとても住みやすいし、漫画家もいっぱい住んでるからと。ところが引っ越した家は編集長と、もっと怖い編集部長の家のちょうど真ん中あたりだったので……これはハメられたな、と(笑)。こんな恐ろしいところから一刻も早く脱出したいと思っていましたね。

――その環境はともかく、所沢の住み心地はいかがでしたか。

魔夜 いいところでしたよ――なんにもなくて。

――(笑)

魔夜 びっくりしたのは空の青さです。新潟は1年中、雲があるんですよ。新潟っていうのは、特に冬場なんかは、雲の間から太陽がのぞく程度でも「晴れてる」と感じるくらいで。所沢に来たら雲ひとつない。空をさえぎるものもないし。家の周りは一面のネギ畑。上は真っ青、下はネギの青。早起きした日は、近くの畑でネギをもらってきて、おみそ汁にしたりしてましたね。

そんな素敵な場所も作中ではとんでもない秘境に。主人公にベタ惚れの美少年も行き先が所沢と聞くと……。

そんな素敵な場所も作中ではとんでもない秘境に。主人公にベタ惚れの美少年も行き先が所沢と聞くと……。

――『翔んで埼玉』を描こうと思ったのは、どういうきっかけからですか?

魔夜 いや……それが全然覚えてないんです。昔のことってホントに覚えてないんですよ。手を離れたものはどんどん忘れていく。だいたい1週間前のことですら覚えてないくらいですからね。『パタリロ!』の原稿を仕上げて送って、1週間後に編集部から「サブタイトルを決めてください」と言われた時にはもう何を描いたか思い出せないんですから(笑)。忘れないと先へ進めないんですよね。前に描いたものをひきずっていると前に進めないんで。

――直接的なきっかけは、やはり所沢に住んだことになるのでしょうか。

魔夜 それしかないですね。所沢には4年住んでいたんですが、暮らしているうちにうっすらと埼玉県民の劣等感を感じ取って……これをネタにしたらおもしろいかなと思ったんじゃないでしょうか。決して深い理由はないんです。『パタリロ!』にしてもそうですからね。単に思いついたものを描いているだけで、深い意味はない。

――ではタイトルにも深い意図はない?

魔夜 でしょうねぇ……。

――庄野真代さんの『飛んでイスタンブール』[注2]のネタが『パタリロ!』に出てきたことがあったと思うんですが、そこからではない?

魔夜 かもしれないです。

――先生が感じた埼玉県民の劣等感というのはどんなものでしょうか。

魔夜 埼玉の人って東京への憧れがあるんだなというのが、なんとなくわかったんですね。だれかと具体的に話したというわけでもないんですが。東京と比較しがちだけど、基本的には地元が好き。ちょっと自虐的なだけで根は鷹揚(おうよう)。そんな印象を感じていて。自分も当時、実際に所沢の住人だったわけですから、自虐ネタとしてなら描いて許されるかなと。

「今も昔(執筆当時)も、埼玉には他意もイワシもないですよ」とうそぶく(!?)魔夜先生。

「今も昔(執筆当時)も、埼玉には他意もイワシもないですよ」とうそぶく(!?)魔夜先生。


  • [注1]『パタリロ!』 1978年から連載が続く、魔夜峰央の代表作。架空の島国であるマリネラ王国の国王・パタリロが引き起こす騒動を描いたギャグ作品で、耽美な少年愛を取り入れていることも特徴。1982年にフジテレビ系列でテレビアニメ化されたほか、『パタリロ西遊記!』などのスピンオフ作品も存在する。
  • [注2]『飛んでイスタンブール』 シンガーソングライターの庄野真代が1978年にリリースした楽曲。シングル売り上げ60万枚を超える大ヒットを記録した、庄野の代表曲として知られ、今も多くの歌手がカバーしている。

単行本情報

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