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プーさん、SEIMEI……羽生結弦の平昌を振り返る【B級ニュース】

2018/02/27


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「平昌五輪」について。


『フィギュアスケートファン 平昌五輪メモリアル(羽生選手優勝号) (ナンクロプラザ増刊)』 第1巻
コスミック出版 ¥815+税
(2018年2月26日発売)


韓国・平昌(ピョンチャン)で開催されていた第23回冬季五輪が幕を閉じた。
日本勢は過去最多となるメダル13個(金4、銀5、銅4)を獲得。17日間にわたる開催期間の全日程を終了した。
上半身にオイルを塗ったトンガの選手(ピタ・タウファトファ)や、開会式に現れた人面鳥(不死鳥)、フィギュアスケートのエキシビションでOAR選手のエフゲニア・メドベージェワが披露した『美少女戦士セーラームーン』の演技など、さまざまな話題を提供してくれた大会であった。
そこで今回は「マンガで振り返る平昌五輪」と題し、今大会でトピックになった話題を振り返っていきたい。
そだねー。

『陰陽師』 第1巻
岡野玲子 ¥772+税
(1997年7月1日発売)


今大会で大きな注目を集めたのはフィギュアスケート男子の羽生結弦だ。
ショートプログラムとフリーの得点合計317.85点をマークして金メダルを獲得。前回大会に続いての連覇を達成した。
さて、羽生選手がフリーで使用した楽曲「SEIMEI」は、映画『陰陽師』『陰陽師Ⅱ』で使用された7つの楽曲のメドレーである。
映画『陰陽師』は2001年に公開された映画(滝田洋次郎監督)だ。野村萬斎主演でおおいに話題になった作品だが、その原作は夢枕獏の同名の小説。原作小説の単行本は1988年に刊行されている。
そのマンガ版は、岡野玲子によって描かれている。1993年から掲載誌を変えながら連載を継続し、2005年にシリーズは単行本全13巻をもって終了した。日本でもっとも古いSF賞「星雲賞」のコミック部門を受賞したように、非常に高い評価を得た作品である。
安倍晴明を主人公とする伝記作品だが、岡野玲子の繊細なタッチが幽玄の美を演出しており、この世ならざるものを雰囲気バッチリに描いている。
羽生選手の「SEIMEI」に魅了された方は、今度は岡野玲子『陰陽師』でウットリしてはどうだろうか。

『あたしンち』 第1巻
けらえいこ ¥854+税
(1995年4月23日発売)


フィギュアスケートといえば、選手同士の人間関係も注目された。
羽生選手と宇野昌磨選手(銀メダル)の、まるで兄弟のような微笑ましすぎるイチャイチャ……もとい、やり取りに、多くの「ゆづ女子」たちが悶々としたことだろう。
同競技の選手たちから「ゆづ」「ゆづくん」と呼ばれているところが、もしこれが2次元の世界でわれわれが視聴者だとしたら「わかってる! わかってるな!」とツッコミたくなるくらいにツボらしい。
この「ゆづ」呼びに、なぜ「ゆづ女子」たちは心を刺激されるのか?
もしかしたら、過去の記憶、幼いころに見た作品が心の奥底に残っていて、それが喚起されているのかもしれない。
そう、キャラクターを「ゆづ」呼びする作品といえば、もちろん『あたしンち』(けらえいこ)である。
『あたしンち』は、ほのぼのファミリー作品である。おおざっぱで節約家の母親、無口な父親、ドジな姉みかん、シャイな弟ユズヒコの立花家を中心にストーリーは展開していく。この立花家の母が、ユズヒコを呼ぶときに「ユズー」と呼ぶのだ!
なにしろアニメ版『あたしンち』は、2002年から2009年まで7年以上もの長きにわたって放映され、さらに2015年には第2期も放映された長寿作。磯野さんち(『サザエさん』)やさくらさんち(『ちびまる子ちゃん』)に次ぐ、国民的ファミリーといえる。
母の呼ぶ「ユズー」(CV:渡辺久美子)の声が心の奥底で再生され、郷愁と愛惜の念が、知らず知らずのうちに喚起され、ゆづくんへの愛情が倍加されているハズだ。
そだねー。

『キムンカムイ―Nature panic drama』 第1巻
三枝義浩 ¥390+税
(1999年7月14日発売)


なお、羽生選手の演技終了後、ファンはリンクに向かって、黄色いクマのぬいぐるみをプレゼントとして投げ入れるのが慣習になっているようだ。
羽生選手にとっても、ファンにとっても、この黄色いクマは特別なクマなのである。 クマを扱った傑作といえば『キムンカムイ―Nature panic drama』(三枝義浩)を忘れてはならない。
「キムンカムイ」とはアイヌ語で「山の神」という意味で、ヒグマのことを指す。アイヌ民族はヒグマを山の神として讃えていたのだ。
本作の主人公・片瀬遼は、幼なじみと一緒に北海道へと釣りに出かける。しかし天候の悪化によって山小屋で一晩過ごすことになると、小屋で合流した人たちがヒグマに襲われてしまう。主人公が被害の当事者になる動物パニック映画や災害映画のようで、刻一刻と最悪の状況に追い込まれていく様子が恐ろしい。
古くから全国に残る熊害事件は恐ろしいばかりだが、しかし動物園などで見せる熊の生態は、安全が保証されている場所から見る限りにおいては、非常に愛らしいものだ。
クマの愛らしい側面を最大限にデフォルメしたキャラクターは、羽生ゆづくん選手の愛らしさともマッチして、やはり「愛らしさ×愛らしさ‥‥! 愛らしさの倍づけ‥‥ ククク‥‥!」と、ハンチョウみたいな理論で解釈したい。
そだねー。

「マンガで振り返る平昌五輪」と題しておきながら、すっかり羽生選手のことしか触れていないが、そこは寛大な心で許してほしい。
大会期間中、将棋の羽生竜王がニュースになり、羽生が勝ったのか羽生が負けたのか、メディアを騒然とさせたこともあった。
まあ、将棋の竜王もフィギュアの王子も、どちらも金は二枚持ち、ということでひとつ……。
そだねー。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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