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『恋の超時空砲 奇想漫画家駕籠真太郎の美少女セレクション』 駕籠真太郎 【日刊マンガガイド】

2015/06/29


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『恋の超時空砲 奇想漫画家駕籠真太郎の美少女セレクション』
駕籠真太郎 久保書店 \1,185+税
(2015年5月30日発売)


うーん、この切れ味の鋭さ!
そう表現したら、作風の話かと思われてしまいそうだが、駕籠真太郎の場合、その言葉はまず、文字どおりの人体の切断にこそかかる。

本作『奇想漫画家 駕籠真太郎の美少女セレクション 恋の超時空砲』は、過去発表作から「美少女」をテーマにした短編を選出している作品集。ただ、そこに萌えは皆無だ。
スプラッタに、エログロナンセンス。痛み、怖気、痒み、寒気の果てになぜかニヒルな笑いがこぼれてしまうというのが、駕籠作品。
そうした意味では、作風も切れ味鋭い。絵柄もシャープで凝ってはいても媚びてはおらず、突き抜けていてドライにしてクールだ。

さらに、そのセンスも切れ味鋭い。収録作の「口腔観戦症候群」は、彼氏の浮気を疑う女子大生が、男友だちに相談を持ち掛けるとこから話が始まる。
この相談に対して男友だちは、「女の口というものは つきあっている男のモノに合わせて変形するのだ」と持論を展開。「ゆえに女の口を見れば 相手の男のチンコの形を推測できるってことになる」。
そこから2人は、女子大生の口と同じかたちの口を持つ女性を辿っていくことになるが、大丈夫だろうか?

まずこの男友だちの奇妙な発想──そもそもの著者の奇抜な着想からして、はたして読者はちゃんとついてきているんだろうか!?
しかし、そこは駕籠ワールド。淡々と進んでいく尋常じゃない話に、読めば自然とグイグイ引きこまれてしまうのだ。
また、口のかたちの話が出たそのときから、本作ではそれぞれの女性の口が特殊な形状で描かれ始める。
さらに同作では思わぬ展開と思わぬオチが待つが、いやはや、筒井康隆や星新一のブラック不条理SFのような味わい。ただものじゃないのだ、駕籠真太郎は……。

冗談抜きに、心臓の弱い方、グロが嫌いな方、倫理観が強すぎる方にはおススメしない。
でも切れ味鋭いものにみずから進んで触れていきたい、そんな殊勝な人は必読だ。まだこんなマンガは存在する。著者の姿勢と才気こそ、恐るべし!



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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