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落語家・立川志ら乃師匠に聞く!「落語マンガ」って、ぶっちゃけどうですか? 国立演芸場花形演芸大賞銀賞・受賞記念!【目ききに聞くスペシャル】

2015/04/02


近年、「落語」をテーマとしたマンガが増えています。マンガから興味を持って、実際に落語の音源や動画を聴いたり観たり、そして寄席や落語界に足を運んでみて……という人も多いのではないでしょうか。

さて、本物の落語に触れてみると、気になってくるのは「プロの落語家さんから見たら『落語マンガ』ってどうなのよ?」ということ。
そこで今回は特別企画として、話題の落語マンガ『昭和元禄落語心中』のアニメにも出演されている声優の関智一さんを「客分の弟子」に持ち、本誌「このマンガがすごい!」の選者としても常連の、落語立川流の立川志ら乃師匠に、編集部が注目する落語テーマのマンガ3作品についてお話をうかがってみました。

志ら乃師匠は、なんと先日、国立演芸場 花形演芸大賞銀賞を受賞したばかり!
プロならではの視点で語る、落語マンガの魅力とは!?

立川志ら乃

1974年生まれ。落語立川流の落語家。

1998年、立川志らくに入門。戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』からとった「志ら乃」の高座名を与えられる。
2003年、立川談志による昇進試験に合格し、前座から二ッ目に昇進。2005年、NHK新人演芸大賞を受賞。
2011年、志らく一門の真打ちトライアルの結果、立川談志の孫弟子では初となる真打ち昇進。
2015年、国立演芸場 花形演芸大賞銀賞受賞。

ラジオパーソナリティや声優養成所の講師など、幅広く活動中。

『昭和元禄落語心中』雲田はるこ

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『昭和元禄落語心中』第7巻
雲田はるこ 講談社 \500+税

【STORY】
元チンピラの与太郎は、刑務所を満期で出所すると寄席へと向かった。昭和最後の大名人・有楽亭八雲が刑務所の慰問で演った落語「死神」が忘れられず、八雲に弟子入りを志願するのであった。最新7巻では、与太郎は真打ちに昇進して八雲のかつてのライバル・助六の名を襲名。師匠・八雲との親子会に臨むことになる……。

――まずはテレビシリーズでのアニメ化も決定している話題作、雲田はるこ『昭和元禄落語心中』についてお聞きします。

志ら乃 タイトルがいいですよね。「落語と心中」。私の師匠の(立川)志らくは、最晩年の家元(立川談志[注1])の高座を「一席ずつ落語とお別れをしているようだ」と表現しました。私も師匠について家元の最晩年の高座を見てきましたが、本当に一席ずつ丁寧に演っていました。その姿と「お別れをしている」という表現がピッタリだったので、すごく印象に残っています。そのことを思い起こさせるようなタイトルですよ。

――たしかに。なんだか美学を感じさせます。

志ら乃 私の場合はお別れとか心中する以前に、もうちょっと落語と仲よくなる必要がありますけどね(笑)。

――マンガの内容はどうでしたか?

志ら乃 たとえば韓流ドラマにハマる人の心理って、出てくる役者を知らないから感情移入しやすい……という点もあると思うんですよ。役者に関する情報がないから、いろいろと視聴者が自由に想像する余地が生まれますよね。だから落語界という、あまり世間ではよく知られていない世界を題材にしているから、読者の方もいろいろ想像しやすいんじゃないか。「行間」を読みやすいんじゃないのかな?

――師匠と弟子という師弟関係は、われわれ世間一般の価値観からすると、いまいちわからない部分があります。で、師弟愛というところに、BL的なトキメキを見出すこともできるようです。

志ら乃 あと心理描写が多くて、すごく主観的。だから「落語を描く」というよりは「落語家を描く」というところに力点が置かれている気がする。その点では、少女マンガっぽい印象を受けました。少女マンガのトーンで落語家を描いている作品だな、と。

――最新の7巻ではDVD同梱版もリリースされています。主人公の与太郎役を務めたのは、声優の関智一さん。関さんは、志ら乃さんの客分の弟子[注2]になっています。昨年、新宿で行われた志ら乃さんの自主興行「チーム志ら乃」にも出演して「親子酒」を披露しました。正直、かなりうまくてビックリしたんですけど、今回のDVDでは「出来心」を演っています。こちらはもうご覧になりました?

志ら乃 うん、見たよ。アニメのキャラが演る落語として、上出来だと思う。……なんて言い方をすると、偉そうかもしれないんだけど。

――いや、本職の真打ちなんですから、偉そうでもいいんじゃないですか?(笑)

志ら乃 アニメの喋りのテンポって、実際の会話とは違うじゃないですか。だからまずアニメのキャラが話すトーンになっていて、そのうえで落語を演っている。それは実際の落語とは異なったトーンなんだけど、アニメ的に落語らしさが伝わるように演っている。そこがすごい。関さんは本当に芸達者だなと思います。客前で演れば、実際の落語としてもかなりうまくなるだろうと感じました。

――アニメ作中で印象に残っているシーンはありますか?

志ら乃 与太郎のヤクザ時代の兄貴分がやってきて、それで与太郎が高座に上がるじゃない? そのときに与太郎の視線がブレて、座布団が左右に揺れるシーンだけど……。

――ありましたね。単行本1巻だと、緊張した面持ちで与太郎が高座に上がりますが、視界が揺れるような演出はありません。

志ら乃 私は初高座が師匠の会で、場所は国立演芸場だったんです。楽屋では意外と緊張していなかったんですが、いざ300人のお客の前に出て行くとなったときに、客席が暗くなって、座布団だけにピンスポットが当たっているように感じたんです。高座に座布団だけがポツーンと置いてあって、「うわー、あそこでひとりで演るのか!」って焦りましたよ。

――じゃあ、あのアニメの演出は、演者目線では、かなりのリアリティがあるんですね。

志ら乃 私に関していえば、あのシーンは実際に「あった」!

――これは読者の方にも、ぜひそのシーンを見ていただきたいところです。ちなみに、志ら乃師匠がその時にかけた噺は?

志ら乃 「道灌」です。

――単行本の第1巻「其の三」で、与太郎が演っている噺ですね。

志ら乃 立川流では最初に教わるのが「道灌」。初高座の持ち時間は15分と告げられていたのに、どう稽古しても18分になっちゃう。「まあ、3分くらいならいいかな」と思っていたんですけど、高座を下りてきて時間を見たら、8分しか経っていなかった!

――どれだけ早口だったんですか(笑)。初高座の緊張が伝わるエピソードですね。

  1. 立川談志 2011年に逝去された落語家。1983年に落語協会を脱退して落語立川流を創始した。落語家としての技量もさることながら、著書やテレビ番組、メディアへの露出によって後の落語界に多大な影響を及ぼした。今回のインタビュー相手である立川志ら乃師匠は、家元の孫弟子にあたり、孫弟子としては最初の真打ちとなる。
  2. 客分の弟子 かつて立川流にはBコース(有名人)が存在し、ビートたけしや高田文夫、ミッキー・カーチスらが家元の弟子となっていた。志ら乃師匠の客分の弟子は、そのBコースをモデルとしている。落語家として入門するわけではなく、別ジャンルで活動し、志ら乃師匠に落語の稽古をつけてもらう。一番弟子は女子プロレスラーの華名(高座名は華激家かな乃ん)、二番弟子は声優の関智一、三番弟子は芸人のホシカワ、四番弟子は芸人のふくべえりこ。志ら乃師匠の落語会では、客分の弟子が高座に上がり、落語を演ることもある。

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