日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『無限の住人』
『新装版 無限の住人』 第15巻
沙村広明 講談社 ¥980+税
(2017年2月23日発売)
沙村広明のデビュー作にして代表作である異色のアクション時代劇『無限の住人』。4月29日に全国公開となる映画版の公開にあわせて2016年8月より毎月刊行されてきた新装版が、オリジナル版のちょうど半分の巻数、全15巻で完結した。最終巻の描きおろしカバーは表紙が万次と凛の後ろ姿。裏表紙は最終幕まで読み終わってから、じっくりとながめてほしい。
「月刊アフタヌーン」にて同名の読み切りが発表されたのが1993年6月のこと(1993年8月号)。以降、19年半にわたって連載は続いた(最終話は2013年2月号)。
あまりの長期連載に「タイトルどおり無限に続くのでは……」とクラクラした時期もあった。だって、主人公の万次が不死身なんだもの。
この新装版・最終巻は雪が舞う那珂湊(なかみなと)が舞台。江戸を追われた剣客集団・逸刀流と幕府の吐鉤群(はばき・かぎむら)率いる六鬼団が激突。
ここに逸刀流に恨みを抱く少女・浅野凛と彼女の用心棒で不老不死の力を持つ万次、さらにはかつて逸刀流を狩っていた無骸流や幕府の別線らが入り乱れてのバトルロイヤルが勃発する。
恨みが恨みを呼び、もはやどこに正義があるのかわからない状態のなか、互いにその強さを認めあい、畏敬の念を持って対峙する剣士たちの姿が、たまらなくかっこいい。
序盤から天津影久(逸刀流統主)×吐鉤群(幕府・新番頭)、万次(無所属)×荒篠獅子也(六鬼団)など注目のカードが目白押し!
ところが主役の座を屈強な男たちから奪う勢いなのが、逸刀流最強の剣士・乙橘槇絵。そのセクシーで華麗な戦いぶりに、釘づけとなること必至だ。
はたして最後まで生き残るのはだれなのか? 両親を殺した天津影久を討ち取るために過酷な旅を続けて来た凛の無念は晴れるのか? 壮大な物語は最後の最後まで目の離せない展開が続く。
圧倒的な画力と構成力、魅力的なキャラクターと軽妙洒脱な会話の応酬、トリッキーかつ凄絶なアクション。こんな作品を20年近くテンションを落とさずに描き続けた沙村広明という漫画家には、脱帽するしかない。
セリフで多くを語らず、小道具や表情で読者に様々な情報を伝え、どっぷりと余韻を残す最終幕は何度読んでも鳥肌モノだ。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。