365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月17日は沙村広明(漫画家)の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『無限の住人』第1巻
沙村広明 講談社 ¥514+税
2月17日は漫画家・沙村広明の誕生日。
冬目景や玉置勉強と同時期に多摩美術大学の漫研(漫画部)に所属、1993年にアフタヌーン四季賞を受賞しデビューした、画力の高さで知られる実力派作家だ。
今回取り上げたいのは、そのデビュー作にして約20年にわたる連載の末、2013年に最終巻となる第30巻が発売された時代劇『無限の住人』。
ときは江戸時代、血仙蟲(けっせんちゅう)を植えつけられることで不老不死の身体となった万次と、無天一流統主のひとり娘・浅野凛を中心に、凛の親のかたきである天津影久(あのつ・かげひさ)率いる逸刀流(と、そのメンバーである凶泰斗(まがつ・たいと)や乙橘槇絵(おとのたちばな・まきえ)ら)、幕府の命で逸刀流を襲う尺良(しら)、百琳(ひゃくりん)、偽一(ぎいち)らからなる無骸流、そして吐鉤群(はばき・かぎむら)率いる六鬼団といった、様々な人物と勢力が入りみだれ斬りむすぶ、スタイリッシュな群像劇だ。
ストーリーはこうした複雑さからひと言での紹介はむずかしいが、ページを開けば何より、その力強くも繊細なタッチに魅惑されるはずだ。(たしかに血や臓物が飛びかい、身体は切りきざまれ、残虐な拷問シーンも繰りかえされはするが……)その剣戟の美しさに思わず見惚れてしまう。
そしてそうであるがゆえに、本作をこのタイミングで取りあげる意味があるように思う。
というのも、すでにメディアミックスとしてはアニメ化がなされているが、ちょうど本日2016年2月17日まで、劇団ヘロヘロQカムパニーによる舞台が上演されているからだ。
あのマンガの美麗な表現が、どのように舞台上で演出されるのか。演者には座長の関智一をはじめ、福圓美里、浪川大輔、置鮎龍太郎ら声優も多数出演しているため、アニメからのファンも足を運ぶ価値があるだろう。
そしてもうひとつ、2017年には実写映画の公開も決定している。
監督はバイオレンス・アクションに定評のある三池崇史と、映像化への期待が高まるスタッフィング。そして主演はSMAPの木村拓哉。
『無限の住人』の主人公・万次は不老不死なため、ラストではほかの登場人物はみないなくなっただろう90年後の明治時代に、この物語の運命を肯定するような橋渡しをすることになる。
ところで「木村拓哉」といえば昨月、SMAPを守るため永遠に近い時間を繰り返して生きてきたというタイムリープ説が大きな話題を呼んでいたような――。
<文・高瀬司>
批評ZINE『Merca』(アニメルカ×マンガルカ×ジャズメルカ)主宰。アニメ/マンガ論を『ユリイカ』などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
TwitterID:@ill_critique
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