日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『GET JIRO!』
『GET JIRO!』
アンソニー・ボーデイン(著)
アレ・ガルザ/ラングドン・フォス(画)
椎名ゆかり(訳)
誠文堂新光社 ¥2,800+税 (2017年2月17日発売)
「寿司の食べ方が正しくない!」とブチ切れるタイプの人にオススメの作品。
やっぱり、ワサビを醤油に溶かすような輩は斬首でしょ、斬首。
ゆえあって渡米して寿司屋を開業したジローは、マナーの悪い客を斬り捨てる危険な男。
物語の舞台は近未来。前半では、悪趣味でお高くとまったフレンチ野郎、主義主張がコロコロ変わるけど過激なきれいごとを並べるオーガニックかぶれ、という2つの陣営が争う『ミスター味っ子』×『マッドマックス』的な世界で、両陣営から戦力として強引に勧誘されたジローが血の雨を降らせる。
後半は、そんな人斬り寿司職人ジローのオリジンともいえる、日本での出来事が描かれる。
単なるキワモノかといえばさにあらず。
キワモノ感はたしかにふりきってるのに、なんでかストーリーの展開は王道。
前半のクライマックスであるビルのなかの原野での大決闘シーン、両陣営の情愛と皮肉に満ちた末路、後半で描かれるヤクザの父と異母兄との確執、恋人との別離の描き方など、逆にネタじゃないのか、いやこれは突然マトモになるという新しいボケなのではないか、と思わせるほどに名作感がある。
アメコミだけどさ、これが本当のクールジャパンなんじゃないの!?
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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