365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月18日は「ニュースがなにもなかった日」。本日読むべきマンガは……。
『ラストニュース』 第5巻
猪瀬直樹(作) 弘兼憲史(画) 小学館 ¥485+税
「365日、毎日が何かの記念日」とは本コーナーの序文だが、有史以来、全世界のニュース事情を調べてみたところ、どうやら「ニュースが何もなかった日」というものが存在するらしい。
それは、1930年の4月18日。
通常、イギリスの公共放送局・BBC(英国放送協会)は、政府の様々な部門からの発表を報道する。しかしこの日、政府の公式発表とそれに相反する情報が氾濫していたこともあり、BBCは、ラジオニュースで「本日ニュースはありません」と報道したのち、ピアノ演奏を流すことを選択した。
さすがは毎年エイプリルフールのウソニュースで世界をザワつかせるBBCといえる大胆な放送をやってのけたものだ。
今や、メディアの成熟や進化を経て、世界にニュースはあふれている。
在京キー局「CBSテレビ」で平日夜11時59分から放送される11分間のニュース番組「ラストニュース」に命がけで臨むスタッフやキャスターの仕事ぶりを描くマンガが、かつて「ビッグコミックオリジナル」で弘兼憲史が連載していた『ラストニュース』だ。
学生運動家だった過去を持つプロデューサー・日野湧介(ひの・ゆうすけ)が、様々な事件の裏に隠された真実やそこにひそむ闇を、独自の嗅覚と情報網を駆使してスクープにしあげていく、リアルかつ骨太な物語は連載終了から20年以上たった今でも読みごたえ充分。
ちなみに、弘兼憲史の代表作といえば『島耕作』シリーズだが、じつは『ラストニュース』に『島耕作』キャラが客演しているとおぼしきエピソードがある。
政治家の脱税疑惑をめぐって、秘書の自殺や絵画取引きによる不正な利益供与といった新たな疑惑が生じた事件の中心に、大手新聞社「東都新聞社」が存在することをつきとめた日野らは、“本丸”である東都新聞の創刊百周年記念パーティーに乗りこむ。
この会場には各界の著名人が招かれていたようで、そのなかでスタッフが「初芝電産の中沢社長」の姿を目撃する。中沢社長は就任中にくも膜下出血で倒れるはずなので、どうやら時間軸としては『部長 島耕作』のあたりの話になるようだ。
“登場”時間はわずかだが、『ラストニュース』そのものの作品世界に不思議なリアリティが生まれた瞬間である。
原作者が2012年に選挙資金をめぐって公職選挙法違反に問われるというリアル『ラストニュース』まで起きたことも含めて、非常に印象に残るマンガだ。
<文・富士見大>
編集・ライター。歴史SLGメーカー出身で、歴史はもちろん特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる。最近のお仕事は「東映ヒーローMAX Vol.55」です。