『マエストロ』第1巻
さそうあきら 双葉社 \640+税
クラシック音楽と言うと、どうしても敷居が高く感じられてしまうもの。そんなクラシック音楽を多くの人に親しんでもらおうという意図で、日本音楽マネージャー協会が1990年に制定したのが、本日9月4日の「クラシックの日」だ。もちろんこれは、9.4=「ク」ラ「シ」ックの語呂合わせ。
マンガで、クラシック音楽を親しみやすくした作品といってまず思い浮かぶのは、ドラマ・アニメ・映画もヒットした二ノ宮知子『のだめカンタービレ』だろう。
ただ、そんな大ヒット作品にも負けない名作がある。2015年、実写映画も公開になる、さそうあきら『マエストロ』だ。
第一線の交響楽団でバイオリニストを務めていた香坂だったが、金銭的な理由で楽団は解散。そんな中、天道という謎の指揮者のもと、楽団の再結成と演奏会が決まる。しかし練習場所に指定されたのは下町の町工場で、元団員以外にも素人くさい面々が集められている。しかも目の前に現れた天道は、すっとんきょうでパワフルな老人。ただ、天道の指揮と指摘、彼が目指す音楽にプロたちも衝撃を受けることになる。
設定含めて、マンガ的なおもしろさにもあふれている本作だが、クラシックのうんちくや興味深いネタも豊富だ。たとえば、たくあんを噛む音でいい音をさせる人は、フルートを吹くのがうまい! なんて、そう言われても、なんのことやら? ただ、じつはこれは理にかなったことで、作品を読み、香坂が語っている解説を聞けば、大いに納得だ。
マンガとしても、クラシックの多面的な参考書としても楽しめる本作。まさにクラシック音楽に親しむ「クラシックの日」にうってつけだ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。