365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月20日は森林(もり)の日。本日読むべきマンガは……。
『ハヤカワ文庫 樹魔・伝説』
水樹和佳子 早川書房 ¥820+税
5月20日は、岐阜県美並村などを始めとする、村名に「美」の字がつく10村で結成された「美し村連邦(うましさとれんぽう)」によって、「森林(もり)の日」と制定されている。この日になった理由は、「森林」には「木」の字が5つあることから5月、総画数が20なので20日、ということかららしい。
今回紹介するマンガは、そんな森林が南極に突如出現したことから幕を開ける、『樹魔』とその続編『伝説』だ。
西暦2500年。突如飛来したイルゼ流星群によって大打撃を受けてから5年が経過した地球。大規模な植物反応の調査のため、瞑想によって事象を解明するスペシャリスト、イオ・フレミング博士は、南極へと向かう。そこでイオが見たものは、無垢な少女・ディエンヌと、驚異的な進化を遂げた意思を持つ植物群「ジュマ」の奇妙な関係だった……。
直感を高められた人間と、科学を超えた存在の遭遇を描いた『樹魔』は、儚さを感じさせる世界で、スピリチュアルな概念とサイエンスな概念が融合した末に見せるラストシーンがとても心地よい1作だ。続編の『伝説』では、『樹魔』の設定を活かしつつ、人類の意志と進化というテーマが、圧倒的なスケールで展開されていく。
作中描かれる、文明がいくら発達しようと宇宙の深遠へと旅立とうとしない人類の姿は、21世紀の我々の姿と恐ろしいほどダブって見える。作中の人類がどのような結末を迎えるかは、ぜひその目で確かめていただきたい。
本作には、ほかにも3作のSFが収録されている。自然と人の結びつきを描いた「月子の不思議」、未来を舞台にある家族の真実が綴られる「ケシの咲く惑星」、光瀬龍の小説を原作とした「墓碑銘二〇〇七年」……そのひとつひとつが、読み終えたあとにはいつもの風景を違ったものに見せてくれる、珠玉の作品だ。
電子書籍で入手もお手軽なので、ぜひとも今日は、美しいタッチで織りなされるSF世界に浸っていただきたい。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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