話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『不滅のあなたへ』
『不滅のあなたへ』著者の大今良時先生から、コメントをいただきました!
『不滅のあなたへ』 第1巻
大今良時 講談社 ¥429+税
(2017年1年17日発売)
「このマンガがすごい!2015」オトコ編で第1位を獲得したほか、各方面で大きな反響と賞賛を得た『聲の形』。
その著者である大今良時の新作ということで発表前から注目を集めた本作ではあるが、そのジャンルや世界観は『聲の形』から入った読者にとっては、やや意外なものだったかもしれない。
物語は「それ」と呼ばれるひとつの球体が、語り部である「私」によって世界にもたらされるところから始まる。
曰く「ありとあらゆるものの姿を写しとり 変化することができる」というその球体は、まず地表で最初に触れた石となり、やがて生えたコケを写しとり、そのしばらく後に近くで力尽きたオオカミへと姿を変える。
そして「それ」の持つ強力な自己再生能力で傷をいやし、さまよい続け──そのオオカミを「ジョアン」と呼ぶ、もとの飼い主の少年と「それ」は出会うこととなる。
その少年は、雪に閉ざされた集落でただひとり生活を送る。おそらく最後に残されたひとりとおぼしき彼は、まだ見ぬ仲間や「クダモノ」なる甘い食物にあふれた希望の地を夢見て、物言わぬジョアンに語りかけながら旅を続ける。
しかし、あるアクシデントによって、その希望は決してかなわないものとなってしまう。ジョアンに「僕のこと……ずっと覚えていて」と最期の願いを伝え、力尽きゆく少年。すると「それ」はオオカミから少年の姿となり、ひとり旅を始める──。
以上が本作のプロローグにあたる部分だが、この世界の詳細については、おそらくは架空の世界であろうということぐらいしか、この時点ではわからない。
しかし、一歩間違えば極めて退屈になりかねないこの状況において、孤独な少年のひとり語りとジョアン(の姿をした「それ」)の見せる微妙な表情を丹念に描くことによって、グイグイと読者を作品世界へと引きこんでいく。彼らの交流は、ただ優しいまなざしに満ちた描写だけでなく、ときには冷徹で、場合によっては「それ」の不気味さすら感じさせるのが興味深い。