365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月26日はイサドラ・ダンカンの誕生日。本日読むべきマンガは……。
『ガラスの仮面』 第31巻
美内すずえ 白泉社 ¥429+税
19世紀末、アメリカ。5月26日(※5月27日が誕生日という説もあり)、当時停滞していたバレエ界に新風を吹きこんだ、モダンダンスの祖である女性舞踊家イサドラ・ダンカンが、サンフランシスコにて誕生した。
その情熱と波乱に満ちた人生は、自著『魂の燃ゆるままに―イサドラ・ダンカン自伝』からもうかがえるが、この名前に聞きおぼえがある人の多くは、『ガラスの仮面』の愛読者ではないだろうか(※筆者の独断と偏見だが……)。
憧れであり、ライバルでもある姫川亜弓とともに伝説の舞台紅天女を競うため、アカデミー芸術祭にてもっとも権威のある芸術大賞または全日本演劇協会最優秀演劇賞を獲得する必要があった北島マヤ。彼女が賭けた舞台は、大沢事務所にて黒沼龍三監督の演出のもと、狼少女ジェーンとして主役を演じる『忘れられた荒野』である。
しかし、札付きの鬼監督でもある黒沼をよく思わない事務所は、同時期に上演されるイサドラ・ダンカンの生涯を描いたミュージカル『イサドラ!』のほうを芸術祭への参加作品とした。
主演は星歌劇団を退団後、初の舞台となる円城寺まどかで話題性は抜群、予算も人手もそちらへばかり注がれていき、『忘れられた荒野』は大苦戦を強いられ、マヤの『紅天女』への道も、閉ざされそうになる。
しかし『イサドラ!』の舞台初日のパーティにて、速水真澄の(マヤを思うがゆえの)策略によりマヤが女優魂をたぎらせ、『忘れられた荒野』は一夜で注目作となる。授賞式までの流れは、何度読んでも胸熱の名エピソードだ!
とまあ、ようするに『イサドラ!』は踏み台にされた作品である。マヤ自身も『イサドラ!』を観たあと、独自のイサドラ・ダンカンを演じ、まどかの演技よりも優れている、との評価まで受けている。
ちなみに、そのラストシーンのセリフは死を悟っているかのようだったが、実際のイサドラ・ダンカンは、首に巻いたスカーフが自動車の車輪に巻きこまれ、1927年9月14日に不慮の死を遂げたという。
その間際には、きっとまだまだ踊りたい、との情熱があったのではないか。ならば、たしかに投げやりに演じたまどかよりも、踊り手の本能が目覚めたマヤの演技のほうが迫真のものといえる。
結局のところ、円城寺まどかは、北島マヤに顔をつぶされたかたちになってしまったが、今ごろ(といっても、じつはせいぜい数カ月後なのだが)どうしているのだろうか。
この先、マヤを恨みに恨んでいる速水真澄の婚約者・紫織さんとタッグを組むなんて展開は避けていただきたい……。
まどかだって立派な演劇人なのだから、もっとすばらしいイサドラ・ダンカンを演じるべく演技力を磨いているはず、ですよね⁉
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。