「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、TVアニメ『ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝』
本作のタイトルを見たときにまず目を引くのがタイトルの長さだろう。
「ソード・オラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝」。
うん…………長い。本作(通称:『ダンまち外伝』)の誕生した経緯を知らない人はなぜこんな長いタイトルなのか不思議に思うかもしれないが、じつはこの作品もともとは2年前にはアニメ化もされた、「例の紐」(ヒロインのひとり・ヘスティア様が身に着けている紐)でもおなじみのライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(以下『ダンまち』)のスピンオフなのである。
ということは、本編を観ていなかった人は外伝である本作を楽しめない……? いやいや、そんなことはないので、ご安心ください!
天界での暮らしに退屈した神々が娯楽を求め下界に降臨した時代。
神々から恩恵を与えられた人々は、神のファミリア(眷族)として、モンスターがはびこる地下迷宮の最奥を目指し始めるようになった。
そして、本作の主人公、アイズ・ヴァレンシュタインも、そんなダンジョン探索を行う冒険者のひとり。「剣姫」の二つ名を持つ彼女は、ファミリアの面々とともにダンジョンの深層を探索していくが、ある日、それまで見たこともなかった新種のモンスターと遭遇する。
この一件をきっかけに、彼女とファミリアは神々による大きな事件へと巻きこまれていく……!
このアイズ、もともとは『ダンまち』の主人公であるベル・クラネルの憧れの人であり超重要人物なのだが、無口な性格のせいで何を考えているのかなかなかわからない。さらに強すぎて主人公の出番を食いかねないという物語上の制約で、そこまで活躍の場も与えられなかった。
だが、スピンオフである本作の主人公は紛れもなく彼女だ。アイズの仲間たちとの日常や本編で触れられなかった知られざる一面、そしてだれはばかることもない大活躍を思うぞんぶん堪能してほしい。
彼女が所属するロキ・ファミリアは、数あるファミリアのなかでもダンジョン探索に定評があり、屈指の実力派がそろっている。さらにファンタジーならではの様々な人種が集まっている。
たとえばアイズを慕っており、普段から行動をともにすることの多いレフィーヤはエルフの少女だ。そのほか、天真爛漫な性格をしているが自分の体形にコンプレックスを持っている、アマゾネスのティオナに、ティオナの双子の姉で、思い人の前ではしおらしくふるまうがその本性はけっこう過激なティオネ。
……などといった、ビジュアルも性格もじつに個性豊かな面々がそろっており、色とりどりの彼女たちが普通に買い物なんかをしているだけでも見ていて楽しい。
その一方で、モンスターとの戦いでは、それぞれの特技をいかした戦い方や息のあったチームワークによる、手に汗握る戦闘を繰り広げてくれる。
本編である『ダンまち』の主人公、ベル・クラネルは、雑魚モンスターと戦ってコツコツレベルを上げたり、ファミリアのメンバーを1人ひとり集めていったりと、等身大の主人公が一歩ずつ成長していく姿が楽しい作品だった。
だが外伝である『ソード・オラトリア』の主人公アイズは最初からすぐれた剣の腕を持ち、さらに仲間にも恵まれており、同じ世界を舞台にしていながらベルとは全く正反対の立場で物語は進んでいく。
そのためストーリーもほぼ完全に独立している。さらに戦闘の規模や陰謀のスケールなど本編を超えている部分も見受けられるのだ。
ベルもこちらの物語に少しだけ顔を見せたりするが、今のところ話の流れには大きく関与しないので、本編を観ていなかったという人でもじゅうぶん楽しめる内容になっている。
そのため『ダンまち』を観ていなかったという人も安心して観ていってほしい。そして、それで本作を気に入った場合は、ぜひ『ダンまち』のほうもご鑑賞を。
そうすれば、いつか来るであろう2つの物語が交差する日に、よりこのシリーズを楽しめるはずだ。
TVアニメ『ダンまち外伝』を観たあとに……
今回、TVアニメ『ダンまち外伝』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ&小説を紹介しちゃいますよっ。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア』 大森藤ノ(作) 矢樹貴(画) はいむらきよたか/ヤスダスズヒト(キャラクター原案)
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア』 第1巻
大森藤ノ(作) 矢樹貴(画) はいむらきよたか/ヤスダスズヒト(キャラクター原案)
スクウェア・エニックス ¥571+税
(2014年11月13日発売)
コミック版は現在8巻まで発売されている。
本筋ばかりではなく、日常描写やサブキャラの活躍もしっかり描いている丁寧なコミカライズで、なかでも注目したいのはファミリアの主神であるロキ。アニメでは関西弁のセクハラお姉さんといった印象ばかりが目立つ彼女だが、もともとは神様のなかでもかなりの問題児。
このコミック版ではふだんの気のいい笑顔とは違った、毒々しい笑顔をたくさん見せてくれます。
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア』 第8巻
大森 藤ノ (著), (キャラクター原案)ヤスダ スズヒト (監修), はいむら きよたか (イラスト)
SBクリエイティブ ¥620+税
(2017年4月14日発売)
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に登場する【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインを主人公にした、もう一つの『ダンまち』が本作『ソード・オラトリア』だ。
ときには本編で起こった出来事を別の視点から描き、ときには本編ではいまだ語られぬこの世界の秘密に切りこんでいく、単体としてもスピンオフとしても完成度の高い作品だ。
最新巻である8巻では、なんとチンピラ狼男・ベートが主役! 原作でもアニメでもあまりいいイメージのなかった彼の過去と意外な一面が明らかに!?
『ダンまち外伝』のほかに、このマンガもおすすめ!
『アカギ 闇に降り立った天才』福本伸行
『アカギ 闇に降り立った天才』 第1巻
福本伸行 竹書房 ¥552+税
(1992年4月24日発売)
もともとは脇役だったキャラが、スピンオフで主人公となった作品は数多いが、本作はそのなかでも代表的な作品といえるだろう。なにせ、初登場した『天 天和通りの快男児』よりも連載が長く続き、さらに『アカギ』の登場人物である鷲巣が主人公のマンガというスピンオフのスピンオフまで始まるのだからおそれいる。
そんな『アカギ』の長かった――特に鷲巣麻雀が長かった――連載もいよいよ終わりが近づいている。来年の2月に最終回を迎えるという予告もされているので、今のうちに読みなおして、終わりを迎える準備をするといいだろう。
ちなみに麻雀マンガにはほかにも『咲-Saki-』、『天牌外伝 麻雀覇道伝説』、『牌王伝説ライオン』など作中のライバルキャラや強敵を主人公にしたスピンオフマンガが多いので、スピンオフ好きはぜひ注目してほしい。
<文・犬紳士>
養蜂家。好きな野鳥はメジロ。