『刻の大地 愛蔵版』第6巻
夜麻みゆき 復刊ドットコム \1,600+税
(2014年8月25日発売)
最終話までの3話を単行本に初めて収録し、12年ぶりに刊行された、本格異世界ファンタジー『刻の大地』の最終巻。
魔法使いの塔に閉じ込められた少年・十六夜とイリアのもとへ、聖騎士・カイたちが向かったものの、やっと到着というとき、魔法使いと僧侶たちの戦いはすでに始まっていて……。
よくある悪のモンスター(とかドラゴンとか)を主人公側が倒してオシマイっていう、単純な勧善懲悪じゃないのがこの作品の魅力。それはこの巻でも遺憾なく発揮されていて、塔のなかでそれぞれの「正しさ」がぶつかり合い、解決をみるか!?というところで、ここんところずっと情緒不安(?)だったジェンドの影響で、みんなが絶望の影に飲み込まれてしまう。「くっ、ここからどうなる……!?」という幕切れ(本作は未完である)が、かえすがえすも残念ではある。
ストーリーは複雑なんだけど、それぞれのキャラが立ってるので、シリアスな展開中に、いきなりギャグが入っても「ま、こいつならしゃーないな……」と許せちゃう(笑)。
読んでいて、当時(2000年前後)の「少年ガンガン」のイキオイのよさとか、“剣! 魔法! ドラゴン! 仲間と冒険!!”はやっぱり盛り上がるな~とか思い出させてくれる。
今現在人気の作品ももちろんおもしろいんだけど、こういう、かつて“うお~、ムネアツ!”って読んでた作品の絶版・品切れを復活させるサービスはありがたい。
<文・小山まゆ子>
フリーランスの編集・ライター。最新の仕事は、7月29日発売の宝島社刊『アニメCUTiE』の編集&ライティング。