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【日刊マンガガイド】『零の神域』第1巻 篠原花那

2014/07/30


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『零の神域』第1巻
篠原花那 徳間書店 \580+税
(2014年7月19日発売)


オンラインゲームで通貨を稼ぎ、それを現実世界で換金(売買)するRMT(リアルマネートレード)が、頻繁に行われるようになった。
電子データのアイテムや通貨が物理的な現金にかわるなんて、まさに未来社会! まるでデイトレーダーのように、RMTだけで生活する猛者も存在するようだ。
しかし、いくらRMTが発展したとはいえ、オンラインゲーム内の食事で腹が膨れることはないし、転んだからといって痛みを感じることもない。でも、そんな時代がもし本当にやってきたとしたら?

 

本作の舞台は、近未来の日本。
3日前に全財産を失い、人生のどん底にいた神咲零(れい)は、睡眠中に突如、異空間に飛ばされてしまう。そこはモンスターを倒すことでリアルなお金を稼ぐことができる、オンラインゲームの世界だった。
ゲーム自体は、ごく一般的な剣と魔法でモンスターを討伐するスタイル。モンスターを狩れば狩るほど、現実世界の貯金残高が増えていく。

そんなおいしいゲームがあるのなら大喜びで参加したいものだが、ただ1点、プレイヤーに知らされていない事実があった。
それは、デスペナルティ。ゲーム内で命が尽きると、現実世界の死に直結するのだ。

いったい誰が、どんな目的で、このゲームをつくったのか? どういうシステムでゲーム世界の死が、現実の死とリンクしているのか?
そういった謎は、まだ明かされていないが、どうやら金銭的な問題を抱えている人たちばかりが、プレイヤーとして選ばれている様子。零にしても、寝たきりになっている妹の入院費で、素寒貧な状況である。

実際のオンラインゲームのように、課金アイテムを使えばモンスターの討伐が有利になるのもキモ。
当然、生存確率も上がるわけだが、すぐれモノの課金アイテムを購入するには、数百万円が必要という……。
つまり、その課金アイテムを手に入れるために、いくどとなく危険なモンスターと対峙しなくてはならないのである。

プレイヤー同士の殺し合い(プレイヤーキル)はできない設定だけど、パーティーで脱落した人数分が報酬に上乗せされるため、協力してモンスターと戦いつつも、仲間を窮地に陥れようとする性格の悪いプレイヤーもいたしりして。とにかく生き馬の目を抜く、とんでもない世界なのである。 さて、妹想いの零の運命やいかに。

おもしろいのは、各プレイヤーの固有アビリティが、現実世界の性格や環境とリンクすること。
零の場合は、未来視ができる「ベヴンズ・ロード」が抽出された。このアビリティは経験値に応じてレベルアップしていくので、生き残るためには非常に重要。
「もしも自分だったら、どんなアビリティが抽出されるのか?」と考えてみるのも楽しいだろう。
え、オレ? オレの場合は、おもしろいマンガを書店の棚からすぐに探し出せる「コミック・サーチ」かな(即死決定)。



<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。東京都立川市出身。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。
個人サイト ドキュメント毎日くん

単行本情報

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