「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、映画『メアリと魔女の花』
『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』の米林宏昌監督を始め、ジブリ作品に関わる名クリエーターたちが集う「スタジオポノック」の第1回長編作品『メアリと魔女の花』。
ジブリファンの注目も大いに集めている。(ちなみに、「ポノック」とはクロアチア語で「深夜0時」すなわち「1日の始まり」を意味するらしい。)
主要キャラクターには、米林監督が信頼を置く若手実力派俳優がキャスティングされた。主人公・メアリを演じる杉咲花は、『思い出のマーニー』で第3のヒロイン・彩香を好演、ピーターを演じる神木隆之介は、『借りぐらしのアリエッティ』でもメインキャラクター・翔を演じていた。
さて、簡単なあらすじを紹介しよう。
大叔母・シャーロットの住む赤い館村に引っ越してきた少女・メアリは、近隣に住む少年・ピーターが世話をする黒猫に導かれるまま森に入り、7年に1度しか咲かない不思議な花≪夜間飛行≫を見つける。それはかつて、魔女の国から盗み出された“禁断の花”だった――。
「夜間飛行」によって、一時的に魔法の力を手に入れたメアリは、意図せず箒に乗って、魔法世界の最高学府「エンドア大学」に足を踏み入れることに。
メアリはまとまりのない赤毛をコンプレックスに感じている。しかし、「赤毛」は優秀な魔女の特徴とされ、「夜間飛行」の力で強大な魔法を使えるメアリは、校長のマダム・マンブルチュークや、有力な魔法科学者であるドクター・デイの前で高度な魔法を披露し、「100人にひとりの天才」ともてはやされてしまう。
不器用で人並みにお手伝いもできないため、めったに褒められることがないメアリは、まわりに流され、とんでもない事態を引き起こしてしまうのだ。
メアリのついたささいな嘘は、ピーターを巻きこみ、やがてエンドア大学の闇、「夜間飛行」の秘密にいきつくことになる。
さすがは動きのあるアニメーションを得意とする米林監督。魔法を使った戦闘シーンも大迫力。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』全作の撮影監督を手がけた福士享氏が撮影監督を務めるというプレミアな共演で、新たな化学反応が生まれたといえる。
本編終了後のスタッフクレジットには、ずらりとスタッフの名前が並んでいる。これだけの大作、多くのスタッフが血と涙をのんでつくられたのだろう。
「感謝」のところには、高畑勲氏、宮崎駿氏、鈴木敏夫氏の名前が。やはりこの作品は、ジブリの血を受け継いだ作品なのである。
この夏、勇気を振り絞って、自らの過ちと運命に立ち向かうひとりの小さな少女が起こす奇跡を、劇場で見届けてほしい。
映画『メアリと魔女の花』を観たあとに……
今回、映画『メアリと魔女の花』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ作品を紹介しちゃいますよっ。
『新訳 メアリと魔女の花』メアリー・スチュアート(著) 越前敏弥 /中田有紀(訳)
『新訳 メアリと魔女の花』
メアリー・スチュアート(著) 越前敏弥 /中田有紀(訳)
KADOKAWA ¥520+税
(2017年6月17日発売)
映画公開前とあって、『メアリと魔女の花』の原作小説の翻訳が新たに刊行された。
メアリの家族構成や、ピーターと出会うタイミング、メアリがエンドア大学に戻る経緯など、映画では描かれていない部分、異なる部分もあるので、映画鑑賞前・後どちらで読んでも新たな発見があるだろう。
メアリの視点で描かれているので、メアリの人物像がよくわかり、より物語を楽しめるはずだ。
なお、6月17日からスタートした「カドフェス2017」の対象作品なので、全国のカドフェス展開中の書店で本作を購入すると、「カドフェスブックカバー」と「カドフェスオリジナルしおり」がもらえるので、興味のある方は早めの購入をおすすめする。
『メアリの魔女の花』のほかに、このマンガもおすすめ!
『間違った子を魔法少女にしてしまった』双龍
『間違った子を魔法少女にしてしまった』 第1巻
双龍 新潮社 ¥580+税
(2017年5月9日発売)
「間違ってありあまる魔法の力を手に入れてしまった少女」の物語とだけいえば、『メアリの魔女の花』と同ジャンルの作品ともいえるが、こちらはファミリーで楽しめる冒険ファンタジーとはかけ離れた魔女っ子ものである。
見た目からしてヤンキー以外の何者でもない女子高生・真風羽華代(まじば・かよ)は、変身いらずで、こぶしで敵を殴り倒す。
なんたる勇ましさ。華代に力を与えた守護神(ミカ)も恐縮しっぱなしである。(もはや守護神というより、舎弟っぽい。)
『魔王の秘書』など、アクが強い女の子は最近のトレンドなのかもしれない。
<文・穂高茉莉>
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最近少女マンガのレビューのお仕事もちょこちょこと始めました。