日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『精神病棟ゆるふわ観察日記』
『このマンガがすごい! comics 精神病棟ゆるふわ観察日記』
杉山なお 宝島社 ¥880+税
(2017年7月20日発売)
pixiv閲覧数が100万PVを超えるコミックエッセイが、ついに単行本となって登場!
舞台は普段知ることのできない精神病棟のなか……。
見たくても見られない、気になっていても聞けないあの病棟は、いったいどんな世界なのか!?
そんな禁断の領域に潜入開始!
実際に精神病棟で働く著者が、自身の体験から、患者の様子や医師・看護師の日常などを、ゆる~くふんわり描き出す。
しかも、そのゆるふわぶりと、淡々とした著者目線のおかげで、とってもヘビーな題材ながら、だれでも明るく楽しく読めてしまうほんわかな1冊に仕上がっているのが本作のスゴいところだ。
たとえば第1話では、ある患者女性の部屋の掃除を頼まれた著者。
理由は「血液汚染」!? 前からヤンチャな患者だけに、ちょっとケガでもしたんだろう……。そんなふうに考えて部屋にむかってみると、なんと部屋中血まみれ! ベッドも床もカベも一面、血の海となっていたのだ。コレってなんで!?
精神病棟のなかがどんな造りで、どんな雰囲気なのか。
様々な精神疾患には、それぞれどんな特徴があるのか。
そんな基礎的なことさえも、普段関わりのない人にとっては十分おもしろい。
しかし、本作で見られるのは、この閉鎖空間で繰り広げられる患者同士の女子トークに、個性あふれる(?)患者とスタッフの応酬合戦、一見普通に見える人の感情の爆発や豹変などなど……。
そこには私たちの想像を超える内容も多く、時おりくすっと笑いながら、時おり「へぇ~!」と驚嘆させられながら、学べることが盛りだくさん。
茶化すのではなく、精神疾患への誤解をなくし、理解を広める一助にもなるマンガとなっている。
なにより、精神病棟のスタッフの苦労がひしひしと伝わってくるのもこの1冊。
古今東西、とにかく看護師さんというのは頼もしいものだ……とあらためて思う次第。
そんな、刺激的ながらもあたたかさあふれる精神病棟の日々を、どうぞご堪能あれ。
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。