日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『冥王計画ゼオライマーΩ』
『冥王計画ゼオライマーΩ』 第13巻
ワタリユウ(作) ちみもりを(画) 徳間書店 ¥650+税
(2017年6月13日発売)
『強殖装甲ガイバー』の高屋良樹が「ちみもりを」名義で発表し、OVAでも好評を博した伝説のロボット・コミック『冥王計画ゼオライマー』。
その正統続編である本作が、連載開始からおよそ10年の月日を経て、ついに完結した。
前作から数えると、ほぼ30年にわたって展開されてきたシリーズである。
それだけ続くと、ものによっては同じ作品でも味わいが変わることはママある。
しかしながら本作は、いい意味で、作品の軸がまったくブレていない。
曲線を巧みに用いた、マッシブでスタイリッシュなシルエットが印象的なロボットが繰り広げる、ド派手なバトル。
少女マンガの影響を感じさせる、儚げな美少女たちの健気な献身。
80年代中盤から90年代初頭にかけて「おたく」たちから絶大な支持を集めた「メカと美少女」のテイストが、現代的にブラッシュアップされたかたちで濃厚に詰めこまれている。
ストーリー面でも同様だ。
最終巻で描かれるのは、主人公・築嶋真沙希と、その義父・晃造(その正体は……!)の父子愛。
真沙希と仲間たちの絆。真沙希とヒロイン・渡瀬美久の、互いを支えあう純愛。
そして、真沙希と宿敵・総統ネマトーダとの鮮やかな二元論的対立。
クラシックなモチーフが、古色蒼然とすることなく、じつに魅力的に展開される。
過酷な運命を背負い続けてきた登場人物たちが、戦いの果てに何を手に入れ、何を消し去り、そして、何を受け継いだのか。
ぜひ、長い軌跡の果てを見届けてほしい。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei