『草子ブックガイド』第1巻
玉川重機 講談社 \705+税
10月4日は古書の日とされている。制定したのは全国古書籍商組合連合会だ。
古書の「古」という字に「十」が含まれるところと、4日を「書」と読ませる語呂合わせに由来するとのこと。また、「古」の字を「十」と「口」に分割し、「十」と「口」を組み合わせて「田」とし、これを本棚に見立てている……との説もある。
こじつけ感は否めないが、ともあれ10月4日は古書の日であり、10月は「古書月間」とされている。
玉川重機『草子ブックガイド』は、西荻窪の古書店「音永遠(おとわ)屋」が舞台となる。内向的で読書好きな中学生・内海草子は、学校や家庭に自分の居場所を見つけられずにいた。そんな彼女は、悪いとは思いつつも音永遠屋から本を無断で持ち帰り、帰す際に読書感想のメモ(ブックガイド)を本に差し挟んでいた。それが契機となり、音永遠屋の主人との交流が始まる。
草子の書くブックガイドは、小説のあらすじや解釈、草子自身の感想が描かれていく。一話ごとに題材となる小説は異なり、中島敦の『山月記』や、A・ヘミングウェイの『老人と海』、宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』といった、国語の教科書に載っていたような作品もフォローしているから、「そういえばこんな話だったな」と思いだしながら読み進めていくうちに、徐々に物語の本編にも引き込まれていく。
そして草子は、読書を通じて周囲の人たちと交わり、少しずつ自分の居場所を見つけていくが……。
思春期に家や学校に居場所がないと感じたことは、程度や境遇の差こそあれ、誰にでもおぼえがあるのではないだろうか。
そんなときは小説に限らず、ラノベやアニメ、マンガだっていい、フィクションがどれほど心の救いとなったか。そのような経験がある人にこそ読んでほしい作品である。
読書の秋、まずは本作の感想を、身近な人に伝えてみてはどうだろう。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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