日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ゲキカラブ!』
『ゲキカラブ!』 第2巻
ヒトマスモドル(作) ズズ(画) 秋田書店 ¥562+税
(2017年7月20日発売)
四川麻婆豆腐。スープカレー。ハバネロチキン。島とうがらしのペペロンチーノ。
出てくる料理は全部辛いもの。しかもちょっとじゃない、激辛だ。
辛いものが大好きな青年・幸一。片思いしているバイト仲間・冬子が辛いものにハマったのをきっかけに、いっしょに激辛料理巡りを始める。
どれもこれも、食べると汗が吹き出るものばかり。
料理を食べるシーンは、見ているだけで体の血流がよくなりそう。
「食べる女の子はかわいい」というのは昨今の食マンガでは絶対欠かせない要素。
食している時の至福の表情は、性的エロティシズムに通じるものがある。
激辛料理の場合は、完食すること自体が、全身全霊を尽くす戦いになる。
呼吸が荒くなり、汗が止まらない。痛みと旨味で悶絶する。
なのに麻薬的中毒感で、食べ続けてしまう。
辛いものを食べる女の子を撮影した「激辛美女」なんて番組があるくらいに、身体を火照らせ食べる様子は、非常にセクシャル。
冬子はチャレンジャー気質で、少し背伸びして辛いものを食べようとしては辛さに涙を流し、それでもなお食べてしまう。
ボリューミーなおっぱい描写とあいまって、ものすごく艶めかしい。
幸一が食べるトップクラスの辛い料理も、かなりおいしいらしい。
だが、ノドも唇も痛くなり、おなかも壊すという劇薬。
マンガとしてはアスリート的でおもしろい。店側が挑戦状的にハードルをあげているので興味は湧くが、うかつに踏みこむと危険そうだ。
そのぶん、辛いものが苦手な少女・カズミが参戦することで、「ちょっと辛くておいしい」ものも多めに紹介されているのがうまい。
初心者でも「辛いことによって旨味が引きたつ」のを体験できることが、しっかり解説されている。
第2巻は完結巻。攻撃的な食を描いた珍しい作品なので、なんらかのかたちでまた激辛料理のおもしろさと、女の子のフェティシズムを描いたマンガをもっと見てみたい。
できればカズミの「ちょい辛」スピンオフ希望。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」